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売れる営業 私の秘密

「やれません」も即答 大型受注決めるスピード営業 大和ハウス工業 竹田雅史さん

2017/7/5付

 顧客の要望をつかんで土地を探し、各種施設の建設プランを立てて工程を管理する。大和ハウス工業の建築事業部第3営業部の主任を務める竹田雅史さん(33)は1件で数十億円の大型受注を連発する。できないことすらも即答するスピーディーな応対で相手の信頼を得る。顧客の時間を奪わないことが基本中の基本だ。

 多摩川を挟んだ羽田空港の対岸。川崎市が開発するライフサイエンス研究拠点「キングスカイフロント」で、近くの工場が供給した水素を電源にする世界初の「水素ホテル」の建設が進む。2018年春の開業予定で、東急ホテルズの「東急REIホテル」が入る。設計・施工は大和ハウス。竹田さんがシナリオを描いた。

■涙した新人時代

 最寄り駅から徒歩15分。ビジネスホテルの立地は駅前が鉄則なだけに市が望む宿泊施設の誘致は難航した。竹田さんは20社ほどを回り、東急ホテルズに絞った。同社は羽田空港の横で「エクセルホテル東急」を運営する。車なら空港から10分。近くで系列のホテルを展開する利点を説く準備に入った。顧客層を含めて地域の特性を分析。品川駅の近くにホテルを持つ競合の鉄道系企業にも戦略を聞いた。「羽田空港から見たら一等地のはず」。1年近い交渉が実った。

 建築事業部は物流センターの開発が主力。東京本店(東京・千代田)に勤める入社9年目の竹田さんは倉庫の建設請負から社歴を始め、1年目に延べ床面積が約3300平方メートルの千葉県柏市の物件を担当した。受注額は2億5千万円と新人で異例の大型物件だ。上司だった浦川竜哉取締役常務執行役員(56)がお膳立てした。「くじけない。しぶとさがある」と見込んだ。

 主な仕事は施工管理。午前8時には浦川さんに進捗を報告した。「24歳で泣いた」ほど苦しんだが、翌年、同じ顧客から福岡市の3万3千平方メートルの倉庫の建設も任された。20億円の受注だった。

 浦川さんからノウハウを得た。何より「スピーディーな回答と対応」を重視する。顧客との交渉の場では「やります」か「やれません」を言う。営業がやれませんと言うのはかなりの決心が必要だ。それだけに相当な準備が求められる。

■電車で構想練る

 1つは社内取材だ。「ヒアリングシート」と呼ぶ社内の手引を使うこともあるが、各部署との意思疎通の量が極めて多い。部材の調達や技術者の確保の状況を聞き、日程面での限界を掌握しておく。社内の時間を有効に使うため、電車での移動時間を構想にあてる。資料を読み込んでノートに考えをまとめ、会社で再構成して図面にする。締め切りの1日前に顧客に提案書を送るのが基本だ。

 「遅いと言われたら致命傷。スピードこそ最大のサービス」。そう意識するのは相手の立場で物事を考えるからだ。自分の仕事の遅れは相手の時間を奪い、信頼関係を損なう。

 入社3年目の時、新規顧客の質問の意図を深く考えずに投げやりに答えた。「もう来なくていい」と言われ、謝罪に行っても相手にされない。「帰れ」「帰れません」。最後は許してもらったが、営業の本質を垣間見た。

 16年度に社長賞を受けた。14~16年度の3年間の契約高は計約250億円。東京本店の建築事業部のメンバーは平均年20億円ほど。1日20軒以上を回り、付き合いのある顧客は400社近くになった。

 今は研究施設の案件獲得に注力する。競争が激しい物流センターやオフィスが最後は賃料の戦いになるのに対し、競合が少ない。飛び込み営業と業界研究に精を出す。限られた時間の大切さを感じるたびに相手の時間を最大にする意味をかみしめる。

(北西厚一)

 たけだ・まさふみ
 2007年立命館大理工卒、大和ハウス工業に入社し、東京本店で物流センターの開発などを手掛ける建築事業部に配属。現在は病院などを担当する第3営業部の営業第1課主任。京都府出身。33歳。

[日経産業新聞2017年7月5日付]

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