「学び直し」で仕事力UP 大学が実践プログラムオンライン講座、場所選ばず 職場に説明、理解得て

「社会人の学び直し」に注目が高まっている。希望する人も増え、オンライン講座など多様な形が登場している。ただ、学生時代とは異なり会社に勤めながら通うとなると注意すべき点もある。ポイントをまとめた。

学び直しへの関心は高まっている(島根県江津市)

沖縄県の地方紙記者、與那覇里子さん(34)はこの春、首都大学東京システムデザイン研究科に入学した。これまで沖縄戦のデジタルアーカイブづくりに取り組んできた経験があり、「今後のキャリアを考えインターネットのニュースやジャーナリズムをより深く勉強したいと思った」(與那覇さん)。会社を休職し、修士号をとる予定だ。

変化が激しく、高度化・複雑化している現代社会では、與那覇さんのように、会社などの業務を通じてだけでは、技術や知識の向上にどうしても限界を感じることがある。そのため、職場外に学習の場を求めるのが、社会人の学び直しだ。

文部科学省のまとめによると、大学院に入学する社会人の数は、日本は他国と比較すると少ない。しかし、学んでみたいと考える人は3割に上り、潜在的なニーズはある。同省も社会人や企業のニーズに応じた実践的・専門的な教育プログラムの提供を推進しようと、大学による社会人の学び直しのためのプログラムの認定制度を2015年に設置。修了者には修了証を発行するなどの形で魅力を高め、学び直しの場の広がりを後押しする方針だ。

「自費で学び直しをしている人は増えていると感じる」。こう語るのは、ムックシリーズ『社会人&学生のための大学・大学院選び』(リクルートホールディングス)の乾喜一郎編集長だ。

以前は2年間かけて大学院に通って修士号を取得するパターンが中心だったが、最近は一部の授業を受講できる科目等履修生の制度や、離れていても学べるオンライン講座などが登場。乾編集長は「各大学が多様なコースを提供し、自分が知りたいテーマが、そのままの形で学べるようになっている」と話す。テーマを探す際には、インターネットでの検索だけではなく、社内の先輩に聞いたり、書店のコーナーに足を運んでみたりする方法や、興味を持った研究者からたどってみる方法も有効とアドバイスする。

人材育成・組織開発のための教育や研修、コンサルティングを手掛けるウーマンズ(島根県益田市)の宮崎結花代表も、昔に比べて公開講座や講演会といった気軽に学べる機会が都市でも地方でも共通して増えていると指摘する。こうした機会をまずは試してから、資格取得や大学院の入学といった次のステップを検討して進むのが望ましいという。「自らアンテナを立て、行動を起こすことで、気付きや変化につながるはず」と学び直しの意義を強調する。

宮崎代表自身も、以前勤務していた食品メーカー時代、他社の社外コンサルタントと働く機会があり、新しい分野の仕事に興味を持った。周囲に相談し、社内にあった教育関連の受講への補助制度を活用しながら、産業カウンセラーの養成講座に参加。平日は仕事をしながら土日に半年間通い続けて資格を取得し、人事部に異動した経験がある。

「自分が学んだ資格やスキルがどう業務で生かされるのか、もっと考えていくべきだ。学んで終わりではもったいない」と宮崎代表。円滑に進めるには、まず、職場の上司や同僚には、学び直しをしていることを隠さず、なぜ取り組みたいと考えたのか動機も含めて丁寧に説明しておく。そうすることで、職場に受け入れられやすく、フィードバックしやすくなるという。学んでばかりで、本業がおろそかになっては本末転倒だ。

冒頭の與那覇さんも、当初は沖縄県内で職場に通いながらと考えていたが、県内には目標としていたスキルを身につける場がなかったため、思い切って休職して上京する道を選んだ。職場にも前もってきちんと説明して理解を得ており、復帰後どのような形で業務に生かすかについても相談しているという。

社会人の学び直しは、学ぶことそのものが目的なのではなく、仕事にどう生かされるのかという視点がなければ意味がない。「学ぶ」と「働く」をサイクルで回すことが基本のスタンスと言えそうだ。

(ライター 田中 輝美)

[日本経済新聞夕刊2017年7月3日付]