「ただそれ以上に大きいのは、賃金の伸びが鈍いことです。企業の利益の高い伸びに比べると、賃上げには勢いはありません。企業が、手元資金を将来の稼ぎにつながる投資や配当など株主への還元に回しているのが一因です」

「安倍晋三政権は個人消費を喚起するため、大企業に賃上げを求めました。要請を受け大企業は賃上げに動きました。中小企業にも賃上げの動きが出ているほか、パート・アルバイトの時給も上がっています。ただ、バブル期のように皆が好景気を実感できるほど収入は増えていません。一方で社会保険料などの負担が増え、自由に使える可処分所得の伸びが鈍いことも消費者心理に影響しています」

「株や土地が値上がりするなか、今は資産を持つ人とそうでない人との景気実感に差が出ています。都市と地方でも景気に温度差があります」

――今後の見通しはどうでしょうか。

「世界経済が失速しなければ、日本も当面は穏やかな回復を続けることができるでしょう。人手不足のなか、賃金は上がりそうなので、その分が消費に回れば、企業の売り上げも増え、さらに賃金が上がるという好循環が生まれます」

「ただ、少子高齢化に伴って、年金や医療・介護費用など将来への不安から、現役世代が消費を抑えて貯蓄にお金を回すという話をよく耳にします。将来の不安を取り除くには、日本の成長力を引き上げるとともに、財政を健全化することが重要になってきます」

「今後、人口が減っていくなかで、成長力を高めるには労働生産性を向上させる必要があります。カギを握るのが第4次産業革命です。人工知能(AI)や、あらゆるモノがネットにつながるIoT、ロボットなどを柱とする第4次産業革命は世界的に注目を集めており、政府が推進に力を入れているほか、日本企業も関連投資を増やしています。この波にうまく乗って日本の成長力が高まれば、個人の収入も国の税収も増えます。皆が多少なりとも明るい未来を描けるようになれば、今より景気回復を実感できるようになるでしょう」

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