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一時に比べて高級ブランド品の売れ行きが鈍るなか、スイスの腕時計「フランク・ミュラー」が好調を続けている。主力店「ウォッチランド東京」(東京・中央)で副店長を務める清水一賢さん(39)は入社以来、同店に勤務しエースの位置を保っている。販売額は全国の50店の中で常に上位。年間3億6千万円を売り上げた実績も持つ。

「清水さんはいらっしゃいます?」。平日の午後、10センチメートルはある厚いドアを開けて東銀座駅に近い店に客が入ってくる。男女を問わず40代以上が多い。スーツ姿はもちろん、Tシャツの人もいる。欧州製のアンティークの家具が並ぶ美術館のような非日常の空間に気軽に足を踏み入れる。

「可能です」ではなく「承ります」

買いに来たわけではない。次に買う商品の相談や腕時計の流行、美容や健康、最近出かけた旅行や買った外車、果ては「巨人は勝てませんね」とペナントレースの話まで。清水さんは「お酒を出さない夜のお店みたいなもの」と笑う。

「買ってもらうのは高額品。何度も来てもらって信頼関係を築くことが大切」。居心地の良さを感じてもらうことが先決だ。

2004年に転職し、この店に配属されて間もないころ。研修で教わった商品の知識をもって話すのに、客の様子が落ち着かない。当時の店長は暇を見て来たプロ野球の選手らと楽しげに話している。「しっかりと説明すれば伝わると思っていたが、実は違うと学んだ」瞬間だった。

店長に近づこうと実践した一つが言葉遣いだ。それまで以上に角の立つ言い方を避け、クセのある人もすんなり受け入れられる表現を使った。「可能です」ではなく「承ります」。顧客の耳に残るので同じ言葉は何度も使わない。

求めていることを早く察知するすべも磨いた。いつも以上に店内を歩き回る人には新商品を提案し、興味の示し方を見て好みを絞る。口調や表情に疲れが見えた客には商品の話はしない。聞き手に回りつつ、急いでいる人には急いでいるそぶりを見せる。自分が興味のない分野を含めて様々な話題を知るために目を通す程度だった新聞を熟読。経済や政治、スポーツや芸能の話を突然振られても答えられるようにした。

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