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詰め将棋、人気高まる 藤井四段が熱中 思考力鍛える

2017/6/19付 日本経済新聞 夕刊

2017年春の詰将棋解答選手権に挑んだ藤井四段(左)ら

 詰め将棋がブームになりつつある。連勝記録で話題の最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)がこれを重視しているためだ。論理的な思考力を鍛える効果に、改めて注目が集まっている。

 「今年も優勝は藤井四段だったか」。関係者から感嘆の声が上がった。2017年3~4月に開かれた詰め将棋の全国大会「第14回詰将棋解答選手権」。最上位クラスであるチャンピオン戦にはA級棋士をはじめとするプロが多数参加したが、その中で藤井四段が優勝。しかも、小学6年のころからの3連覇だった。

■正確さ・速さ競う

 詰め将棋は、王手を連続させながら最短の手数で相手の玉を詰ませるパズルだ。いくつかの駒が置かれた「問題」を解く上では多くの選択肢があり、論理的な思考力が必要となる。一般の対局である「指し将棋」とは区別されるが、終盤戦での読みの力を鍛える練習方法としてアマチュアだけでなくプロ棋士にも定着している。

 改めて今、注目を集めているのは、先輩棋士を次々と破った藤井四段が詰め将棋でも「トップ」であるためだ。さらに、問題を解く正確さと速さを競うこの大会を数年前に2連覇した斎藤慎太郎七段(24)が今期、棋聖戦の挑戦者になるなど詰め将棋を得意とする棋士の活躍が目立つこともある。「詰将棋解答選手権」の参加者は年々増え、今年は前年を約5%上回った。

 「指し将棋とは違ったひらめきが大切で、解けたときに達成感が味わえる」と藤井四段は詰め将棋の魅力を語る。対局日には早めに会場に入り、頭脳のウオーミングアップに専門の月刊誌「詰将棋パラダイス」(詰パラ)を熟読するという。

 詰パラは1950年創刊の老舗で、愛好家やプロ棋士の投稿作を掲載してきた。編集長の水上仁氏は「指し将棋には出現しないような手筋をしのばせるなど、芸術の域に達している作品もある」と話す。飛車や角といった大駒をタダで捨てる手順を盛り込んだり、歩を打って玉を詰める「打ち歩詰め」という反則に陥らないよう工夫を求めたり。深奥な世界があるという。

■「センス良かった」

 永世名人の資格を持つ谷川浩司九段(55)らが作家として知られ、藤井四段も小学生のころから詰パラに投稿。11歳での初入選作は29手詰めで(解答は後段)、当時の担当編集者が「作者のセンスの良さがうかがえて、将来が楽しみ」と感じた才能だった。

 将棋本を多数出版するマイナビ出版は、創作詰め将棋の集大成となる本の出版に取りかかった。新作の年間最優秀賞に与えられる「看寿賞」に輝いた、過去50年以上にわたる全作品を集め、年内に600ページ規模で刊行する予定だ。

 看寿賞は、江戸幕府が認めた三家元の一つ、伊藤家出身の看寿の名にちなむ。兄の宗看らと詰め将棋を確立したとされ、二人の作品をまとめた「詰むや詰まざるや」は今も名著とされる。現代でも「この本の計200問をすべて解ければプロになれる」と言われるほどだ。

 マイナビ出版の将棋書籍編集長、島田修二氏は「看寿賞作品集は熱心な愛好家向けではあるが、ファンの裾野の広がりを感じるので出版を決めた」と話す。初心者向けの本として有名な「1手詰ハンドブック」(浦野真彦著)の売り上げは今年に入って前年比倍増のペースで伸びている。特に30~40代女性が購入しており、楽しみながら思考力を鍛えられると子供に買い与えるケースが多い。

 パソコンやスマートフォンの浸透も普及を後押しした。詰パラが5年前にスマホの無料アプリを公開すると、20万人がダウンロードしたという。上達に合わせて難問が出題される仕組みなどもあり、新たな楽しみ方をもたらしている。

(文化部 山川公生)

[日本経済新聞夕刊2017年6月19日付]

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