都道府県と政令指定都市にある「発達障害者支援センター」は法律上、早期発見につながる助言や就労支援などを担う。ただ発達障害者と接する保育所や就労支援施設からは「窓口まで相談に行けない」「現場を見てほしい」との声も多い。
大阪市の発達障害者支援センター「エルムおおさか」は15年度、出前研修や訪問支援を計666回実施した。市教委も市立の幼小中高校全てを訪問し、相談に応じている。
発達障害を理解するには、医学や心理学、福祉など横断的な知識が必要。発達障害の支援者に特化した「資格」には現時点で法律上の根拠や優遇措置はない。支援者が必要な知識を得る機会が増えることで、適切な対応が広がり、負担の軽減にもつながりそうだ。
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幼少期の早期発見が重要 地域の小児科医に研修
発達障害は先天的な脳機能の障害が原因だ。2005年4月施行の発達障害者支援法は、自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などと定義する。
幼少期での早期発見と支援が重要とされるが、外見での判断が難しい症状もあり、診断が難しい。限られた専門医に患者が集中するため、診断確定まで時間がかかるのが問題になっていた。
発達障害の可能性がある乳幼児に「かかりつけ医」の段階で適切に対応できるようにするため、厚生労働省は昨春から、地域で開業する小児科医向けの研修を始めた。発達障害に特有の言動などの見分け方を伝え、必要に応じて専門医に橋渡しするよう促す。感覚過敏やコミュニケーションが苦手といった、発達障害児の特徴を踏まえた診察時や治療上の注意点も教える。
研修は国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)が実施。同研修を受講した医師が地元で、他の医師や保健師、看護師向けに研修を開く。発達障害の知見を地域で共有して、早期発見と支援を後押しするねらいだ。
(嘉悦健太)
[日本経済新聞夕刊2017年6月15日付]