まずは「太もも周りのストレッチ」を試そう。お尻を座面の左側にずらして座り、左脚を後ろに投げ出す。背筋を伸ばして気持ちいい程度に、伸ばした脚の位置を調整しよう。同様に反対側も伸ばす。太ももの付け根にある大きなリンパの流れと、下肢の血流を促す。
続いて「太もも後ろ側のストレッチ」。浅めに座り、片脚を前に伸ばす。伸ばした脚のつま先を上に向け、踵(かかと)を押し出す。太もも裏側のハムストリングからふくらはぎが伸びる。
次は「お尻のストレッチ」。足首を反対の脚の膝近くに乗せて、背筋を伸ばしてみよう。お尻の上にある大臀(でん)筋や中臀筋、内側の梨状筋などが伸びる。各ポーズを約15秒ずつ、デスクワークの合間に取り入れるだけで、座り姿勢によるマイナスの影響を減らせる。
座り仕事中、30分に1度は椅子から立ち上がって、動くように心がけたい。長時間座ることで、心疾患など生活習慣病を招くとの指摘もある。
時には思い切って立って作業するのも有効だ。足元に小さな台を置いて片脚を乗せると、立っている時の腰痛を緩和する。台につま先を乗せて、ふくらはぎを伸ばしながら立ち作業することもできる。立ち姿勢、座り姿勢の両方に合うように高さ調整が可能な上下昇降デスクもある。
作業するデスクの環境は重要だ。身近な物を使って、自分の体に合わせたい。椅子に座布団やクッションを置いて高さを上げつつ、座面が前下がりになるように調整しよう。太ももの付け根の圧迫や、骨盤が後ろに傾くのを防ぐ。前かがみ姿勢を避けるため、本や箱を重ねて、パソコンを置く台も高くする。
座り仕事が避けられなくても、負荷がかかりにくい姿勢を取ったり、合間にストレッチを取り入れたりして、健康リスクを減らそう。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2017年6月3日付]