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原発の再稼働、増えるの? 高浜が再稼働、大飯は合格

2017/5/29付 日本経済新聞 夕刊

4号機が5月中旬に再稼働した、関西電力の高浜原子力発電所(福井県)

関西電力の高浜原子力発電所(福井県)の再稼働や大飯原発(同)が安全審査に合格したことがニュースになっていたわ。今後、各地で再稼働は増えるのかな。

原発の再稼働について、杉本優子さん(59)と酒井麻由美さん(36)が久保田啓介編集委員に話を聞いた。

――関西電力の高浜原発4号機が5月中旬に再稼働しました。

「高浜原発は3号機も6月中に再稼働する予定です。これら2基は2015年に原子力規制委員会の審査に合格しましたが、16年3月に大津地裁が差し止めの仮処分を出し運転できなくなっていました。17年3月末、大阪高裁が仮処分を取り消したため、再稼働にこぎ着けました」

「住民らが原発の運転差し止めを求めた仮処分申請や訴訟は全国各地で起きています。16年8月に再稼働した四国電力伊方3号機(愛媛県)も4つの地裁で運転の可否が争われ、広島地裁は3月末に申請を退けました。ただ判例が積み重なってきたとはまだ言えず、各地裁がどんな判断をするか予断を許しません」

――大阪高裁や広島地裁が再稼働を認めた理由は何ですか。

「争点になったのは主に、地震や津波への備えは十分か、規制委の安全審査は妥当か、の2点です」

「東京電力福島第1原発の事故を踏まえて規制委が発足し、重大事故を最小限に食い止めるための新基準を定めました。安全審査も最短でも1~2年以上かけて慎重に進めています。大阪高裁などは『規制委の審査に不合理な点はない』として、安全性にかかわる判断は規制当局に委ねる立場を取りました」

「一方で規制基準が厳しくなったため、電力会社が廃炉を決断する原発も増えています。関電の美浜1、2号機(福井県)や四国電の伊方1号機など6基がそうです。原発の運転は原則40年で『定年』と定められていますが、特別な審査を経れば延長が認められます。しかし、対策工事に巨額の費用がかかるため、再稼働しても元が取れないと判断したためです」

――今後、再稼働の流れはどうなりそうですか。

「高浜3、4号機の再稼働により新基準のもとでの運転再開は計5基になります。それ以外にも大飯原発3、4号機など7基が規制委の審査に合格しており、40年超の運転が初めて認められた高浜1、2号機も19年秋以降に再稼働をめざしています。今後2~3年内には国内で運転中の原発は10基強になりそうです」

「ただ、階段の踊り場のように増加ペースはそこでいったん鈍るとみられます。日本の原発は『加圧水型』と『沸騰水型』の2種類がありますが、これまでに合格したのはすべて加圧水型で、沸騰水型は見通しが立っていません。福島第1原発と同型のため審査のハードルが高いうえ、敷地内に断層が通るなど地盤条件が悪い原発が多いためです。規制委がどんな判断を示すか注目されます」

――私たちの生活にはどんな影響が出そうですか。

「東日本大震災後、節電が定着して電気は量としては足りています。しかし、原発の長期停止により火力発電への依存度は震災前の約65%から最近は約85%まで高まりました。燃料の天然ガスや石油を輸入に頼っているため、電気料金は震災前に比べて家庭用で2割、産業用で3割上がり、国民1人当たりの負担は年1万円増えました。温暖化ガスの排出量も15年度は10年度より増えています」

「天然ガスなどは輸入先が中東や東南アジアに偏っており、海外依存度は1970年代の石油危機前よりも高まっています。もしテロなどで化石燃料の輸入が断たれた場合、日本経済は深刻な打撃を受ける恐れがあります」

「太陽光発電など再生可能エネルギーの利用が増えてきましたが、発電量に占める比率はまだ5%程度です。一方で、関電が高浜原発の再稼働により3%程度の電気料金引き下げを検討しているように、原発再稼働は料金引き下げにつながります。再稼働が当面見込めない東日本の電力会社では料金が高止まりする可能性が高いとみられます」

■ちょっとウンチク

長期的な位置づけ不明瞭

政府が15年に決めたエネルギー需給見通しでは2030年時点で発電量に占める原発の比率を20~22%、再生可能エネルギーを22~24%とするとした。だが、この数字は実現性が高い対策を積み上げたものではない。当時は温暖化防止のためのパリ協定の国際交渉を控えていたため、目標づくりでは温暖化ガスの削減を優先し、30年より先の原発の位置づけをどうするかも曖昧なまま先送りした。

エネルギー基本計画は3年に1度、見直すことになっており、17年度が改定期になる。原発の再稼働が政府の見通しほどは進んでいない現状では、まず原発比率がいまの目標でよいかが議論の焦点になる。2050年ごろまでの原発の位置づけも論点になりそうだ。

(編集委員 久保田啓介)

■今回のニッキィ
杉本 優子さん 金融業勤務。年に1度は中国に足を運ぶ。5月の大型連休には初めて海南島を訪れた。「リゾートマンションがどんどん建っていて、バブル経済を実感しました」
酒井 麻由美さん メーカー勤務。5月の連休は九州に行き阿蘇山など日本百名山のうち3つを踏破した。「天気がイマイチでしたが曇り空の山も神秘的でリフレッシュできました」

[日本経済新聞夕刊2017年5月29日付]

ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は6月12日の予定です。

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