症状の緩和には生活改善が有効だ。カギになるのは緊張をほぐすこと。三輪医師は「本態性振戦は精神的な影響を受けやすい病気」と指摘する。水が入ったコップを持つと緊張して手が震えるが、空のコップだと震えない人もいる。

緊張で震えが強くなる人は、深呼吸をするなどして、なるべくリラックスするよう心がける。震えを意識すると余計に震えが出やすくなるので、気にしすぎないことも大切だ。精神安定剤の服用で、症状が軽くなる場合もある。

カフェインなどの刺激物は症状を悪化させやすいので、人前に出るときは摂取を控えよう。本態性振戦の患者が少量のアルコールを飲むと、一時的に震えが和らぐ場合もあるが、酒に頼らないよう気を付けたい。

人前に出るなど震えては困るという場面がある人は、交感神経の働きを和らげるβ遮断薬の処方を医師に相談しよう。重い症状だと、脳に電極を入れて微弱な電流を流す「脳深部刺激療法」といった外科的治療も受けられる。

服部教授は「震えが止まらないからと諦めないで。日常生活に支障をきたしている人は、積極的に受診してほしい」と助言する。

手の震えが出ていて油断ができないのは、病気の症状の一つとして現れるケースだ。例えばパーキンソン病。脳の黒質という部分に異常をきたし、神経伝達物質のドーパミンの分泌が減る病気だ。手足の震えに加え、筋肉がこわばる、動作が遅いといった症状が出る。

体内で甲状腺ホルモンが作られ過ぎてしまう甲状腺機能亢進(こうしん)症(バセドウ病)は女性に多く、手が細かく震える、暑くないのに汗をかく、人前で話すと胸がドキドキするなどの症状がある。脳梗塞でも、大きな発作の前に、手のしびれや震えが起きる場合がある。

手の震えをもたらす病気は他にも、脊髄小脳変性症、多発性硬化症などがある。服部教授は「手の震えに気付いたときに磁気共鳴画像装置(MRI)検査などを受けると、病気の早期発見や早期治療につながることもある」と話す。パーキンソン病の場合、軽度のうちに治療を始めると、進行を遅らせることができると分かったという。

手の震えは癖のようなものだと軽視せず、早めに適切なケアや治療につなげよう。

(ライター 荒川直樹)

[NIKKEIプラス1 2017年5月20日付]