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売れる営業 私の秘密

スーツ売り上げ、平均の4倍 数字・カタカナ使わない ユナイテッドアローズ 秋山光億さん

2017/5/17付

 セレクトショップ最大手、ユナイテッドアローズが主力とする衣料品店「グリーンレーベルリラクシング」の秋山光億さん(37)は販売員の平均の4倍近くの売り上げを稼ぐ。ルミネ新宿店(東京・新宿)に勤め、主に男性用のスーツを扱う。ネクタイなどとの組み合わせの知識に「数字やカタカナをなるべく使わない」接客術を加えて、初めて店に来た段階から客を引き付ける。

 「細身のスーツは私に似合いますか」「子どもの授業参観では地味なデザインが無難でしょうか」――。東京・新宿の商業ビル「ルミネ2」の5階に入るグリーンレーベルリラクシングには、秋山さんを目当てに多くの男性客が訪れる。大半は購入目的だが、秋山さんは相談だけでも喜んで受ける。

◇  ◇  ◇

 グリーンレーベルリラクシングは主に30~40代の男女向けで、価格は抑えめ。全国に69店あり、ユナイテッドアローズが持つ17ブランドの中で最も店舗が多い。アルバイトを含めて約900人いる販売員のうち、2016年度の秋山さんの売上高は平均の3.8倍、購入客数も2.5倍とダントツの実績を誇る。

 売るためにはまず分かりやすく伝えることを心がける。横文字の専門用語は極力使わない。「ラペル」は「ジャケットの胸の襟」、「テーラードジャケット」は「かっちりとした上着」と言う。

 こうした説明の仕方は慣れた客はかえってうっとうしく感じるが、表情や口ぶりから服にあまり詳しくない客だとみると平易な言葉での説明に努め、初めて来た客の心をつかむ。

 「太ももや腹回りはどれぐらいの余裕が必要かな?」と問われたら、単純に「何センチメートル」ではなく、生地を指でつまんだり腹回りに手を入れたりして「これくらいですかね」とジェスチャーを交えて示す。客は実際に着た時の感覚をつかめる。

 そこで得意のコーディネートを提案する。来店した理由や欲しい商品も丁寧に掘り下げて聞き、暮らしぶりを想像しながら体形や着用シーンを考える。好みとは別の服を薦めることもあるが、「親身に考えてくれている」と評価され、数十人の固定客がいる。

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 何気ない会話から仲良くなることもある。スポーツや芸能、政治経済の情報収集にも余念がない。店長の坪松政和さん(32)も「小さな努力を怠らない」と秋山さんを評する。

 衣料品の販売員では異色の経歴だ。明治大学の法学部を卒業し、一時は弁護士を目指して猛勉強をした。ただファッションや経営にも関心が強く、カジュアル衣料品店やコンビニエンスストアで修業した。コンビニでは1年半で売り上げを2倍にした実績もある。「接客を突き詰めたい」と、08年秋にユナイテッドアローズに転職した。

 最初は苦しんだ。配属された東京・上野の店でスーツの販売を任されたが、うまく立ち回れなかった。

 自分がスーツを着た経験がほとんどなかったこともあり、着用シーンに合わせたネクタイの幅や結び方などが即答できず、半年ほどは悩む日が続いた。「感性に頼れるカジュアルとは難しさが違った」。この時の苦労がナンバーワンに上り詰める礎となった。

 最近は全身のコーディネートを任される機会も増えてきた。先日も「彼女の父親に初めて会う時に好印象の服」を求められ、小ぎれいなジャケットなどを提案したところ、その客に後日、「いい感じであいさつができた」と喜ばれた。こうした声をエネルギー源に、提案力をさらに磨く。

(角田康祐)

 あきやま・みつやす 2002年明大法卒。カジュアル衣料品やコンビニエンスストアの店舗勤務を経て08年10月にユナイテッドアローズに入社。15年9月からルミネ新宿店勤務。主にスーツ売り場を担当する。

[日経産業新聞2017年5月17日付]

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