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職場の知恵

「出戻り入社」への処世術 円満退社し同僚と連絡継続

2017/5/15付 日本経済新聞 夕刊

 柔軟な働き方が広がるなか、転職や留学などの理由でいったん辞めた会社に舞い戻る「出戻り社員」が増えている。慣れ親しんだ職場で働けるメリットは多いが、「勝手知ったる会社」などと安易な考えで戻ると、思わぬ落とし穴もある。

 サイボウズで働く長山悦子さん(31)は、4年前、新卒入社で3年半働いたサイボウズを退職した。理由は、学生時代から関心のあった国際協力の仕事を一度経験したかったから。青年海外協力隊の試験に合格し、会社に退職届を出した。辞める時は同僚から花束やプレゼントをもらったという。

■制度化増える

サイボウズに再入社した長山悦子さん(右)(東京都中央区)

 数カ月後、ボツワナに渡り、3年間、村の女性たちとクラフト(民芸品)ビジネスを立ち上げるプロジェクトを主導。今年1月に帰国し、3月、サイボウズに再入社した。「昔の私を知る人からは、『プレゼンがうまくなったね』などと褒められます」と長山さん。

 実は長山さんは、サイボウズが2012年に導入した「育自分休暇制度」を利用して再入社した第1号。同制度は、転職や留学など自分を成長させることを目的に退職した35歳以下の元社員を対象に、6年以内なら復職を認めるというもの。

 出戻り社員は、人の出入りの激しい外資系やベンチャーでは珍しくないが、最近は、ニトリやNTT西日本など大企業でも制度化するところが増えている。

 エン・ジャパンが運営する転職求人サイト「ミドルの転職」が35歳以上のサイト利用者を対象に行った調査では、全体の10%が、出戻り経験があると答えた。

 「ミドルの転職」編集長の岡田康豊さんによると、出戻りには2タイプある。転職先で成果を上げ、出世して戻るタイプと、転職先でうまくいかず、元の会社の良さを再認識して復職を決意するタイプ。現実には後者が圧倒的に多いという。

 では、出戻りやその可能性を考えた時、どんな心構えや行動が必要だろうか。

 キャリアアドバイザーの藤井佐和子さんは、「まず大切なのは会社の辞め方」と強調する。「いくら仕事ができても、会社とけんかして辞めたら復職はまず無理。競合他社への転職を隠すなどウソをついて辞めるのも心証が悪い。要は立つ鳥跡を濁さないこと」(藤井さん)

 次に重要なのは、辞めた後も元の上司や同僚らと連絡を取ること。特に最近は企業側も採用コスト削減のため個別採用する例が増えているので、つながりの維持は有効だ。

 例えば、「戻りたい時に、時々連絡を取り合っている元同僚にその意思を伝えれば、人事権を持つ幹部に話を通してくれることも期待できる」(藤井さん)。逆に、元上司から復帰を請われるケースも現実に多い。

 関係維持は元の会社の情報収集のためにも大切だ。

 設立して日の浅い会社だと、数年で社風や仕事のやり方がガラッと変わっていることがある。買収や合併でも似たようなことが起きる。「知らずに戻ると、こんなはずではなかったと後悔することになる」(藤井さん)

■「中途」の意識で

 出戻りを考える人の中には、昔のようにやれるのか、一度辞めた自分を受け入れてもらえるのかなど、不安を抱く人も多い。「情報収集はそうした不安の解消にも役立つ」(岡田さん)

 関係維持の方法で一番良いのは、飲み会や食事会に行くこと。「良い辞め方をすれば、辞めた後も誘ってもらえるので、やはり辞め方は重要」と藤井さん。もちろん自分から誘っても良い。

 交流サイト(SNS)の活用も有効だ。藤井さんは「フェイスブックなどで自分の近況をアップしていれば、自分の存在を印象づけられる」とアドバイスする。サイボウズの長山さんも、「アフリカからフェイスブックで元同僚と近況報告し合ったのが、スムーズな復帰につながった」と話す。

 復帰が決まったら肝に銘じておくことは、「変化を受け入れること」(岡田さん)。かつての自分の部下や同期が、上司になる場合もある。割り切りが大切だ。

 実際に復帰を果たした長山さんは、こう話す。「気を付けたことは、例えば、年下に対し、私は前からいたのよといった態度はとらない。逆に、3年半もいたのだから周りは自分をわかってくれるはず、といった甘えの気持ちも排除する。とにかく、出戻りではなく中途入社という意識を持つことを心掛けた」

(ライター 猪瀬 聖)

[日本経済新聞夕刊2017年5月15日付]

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