地サイダー10選 すっきり爽快 味の幅も豊かに
昔ながらのサイダーから果汁が入ったものまで個性が光る。
汗ばむ季節。さわやかな地サイダーで旅気分を味わおう。
味のバリエーション豊富に
サイダーの語源はフランス語のシードル(Cidre)に由来している。リンゴを発酵して造るアルコール飲料のことだ。いわゆるノンアルコールの炭酸飲料をサイダーと呼ぶのは日本と一部アジアの地域だけ。米国などではソーダ(Soda)と呼んでいる。ではなぜ日本ではサイダーという名称が広まったのか。
清涼飲料水評論家の清水りょうこさんによると、明治元年(1868年)、英国人が横浜で「シャンペンサイダー」という炭酸飲料を製造・販売した。これが初の国産サイダーといわれている。その後他社からもサイダーと名が付く炭酸飲料が発売され、サイダーという呼称が定着したとみられている。ちなみにサイダーとラムネの違いは瓶の形だけだ。
「地サイダー」は地場の企業が昔から作り続けているものから、地域の農産物や水を活用して開発したものなど様々だ。その数なんと600種以上ともいわれている。
技術革新によって、かつては難しかった果汁入りサイダーも製造できるようになり、味のバリエーションが豊かになった。冷やして飲むだけでなく、焼酎やウイスキーを割って飲むのもよさそうだ。
シークワーサーと塩がマッチ(沖縄県伊江村)
沖縄本島の北部に位置する離島、伊江島の地サイダー。「湧出(わじぃ)」と呼ばれる伊江島の波打ち際から湧いた真水、海水からとれた塩、沖縄産シークワーサーを使い、地域らしさを前面に押し出した。「シークワーサーのさわやかな酸味で疲れがとれそう」(下井美奈子さん)
控えめな甘さで料理にも合う。「ほんのり塩がきいた、よく研究されている味」(小鷲崇文さん)。「夏の夜に焼酎で割って、ぜいたくなサワーとしてガブ飲みしたい」(斉藤賢太郎さん)
「言えそうだ」とかけた「告白飲料」というコンセプトもユニーク。「デザインも凝っていて、手土産に買いたくなる。地サイダーの進化形的存在」(里井真由美さん)
(1)内容量 200ミリリットル(2)税込み価格(購入できる最低単位、送料別) 540円(2本)(3)販売元 伊江島物産センター、販売サイト http://www.rakuten.co.jp/auc-ie-mono/
甘さと程よい苦み効く(鹿児島県枕崎市)
芋焼酎「さつま白波」で知られる鹿児島県の酒造のサイダー。鹿児島県南さつま産の完熟キンカンを皮から丸ごと煮詰めたソースを使って「ピールが効いている」(小鷲さん)味に仕上げた。「自然なキンカンの香りを楽しめる」(谷宣英さん)
糖度が16度以上のキンカンを選び抜いた。「キンカンの酸味と甘さ、ほどよい苦みが炭酸のすっきりした清涼感にマッチしている」(檀まゆみさん)。「後味がさっぱりさせてくれるので、肉料理の後に飲みたい」(下井さん)。
(1)245ミリリットル(2)324円(1本)(3)薩摩酒造、http://shiranamitsuhanshop.com/
昔ながらの正統派(佐賀県小城市)
昭和のサイダー全盛期の味を、昔ながらの製法にこだわり復刻した。グラニュー糖を使い炭酸を強く含んだ味わいは「昔飲んだサイダーを思い出す正統派の味」(下園昌江さん)。「『ご当地』を超えた完成された印象」(林律子さん)
創業は明治35年(1902年)。薄いブルーの瓶に、昭和初期から使い始めた「スワン」のロゴを復活させたラベルは「色のトーンや文字の書き方といったレトロ感が魅力的」(里井さん)。
(1)330ミリリットル(2)756円(3本)(3)友桝飲料、http://www.tomomasu.co.jp/shop/
塩気と甘み バランス良く(石川県加賀市)
能登で400年以上続く伝統の製法でできた塩を使ったサイダー。桶で海水を汲み、人力で塩田まで揚げることから「揚げ浜式」と呼ばれる揚げ浜塩は、バランスのとれたうま味が特徴で「塩味がキレの良さとうま味につながっている」(林さん)。「発汗によって失われた塩分を補充してくれるのも評価したい。夏の暑い日に飲みたい」(松本学さん)。炭酸は「ふんわりとした優しい発泡。やわらかな塩気と甘みとのバランスがよい」(檀さん)。
(1)340ミリリットル(2)1339円(6本)(3)アンテ、http://ante-jp.com/shop/
希少なかんきつ類使い微炭酸(川崎市)
炭酸飲料メーカーが、地元ならではの特産品を使ったサイダーを目指して開発した。「すっきりとしていて、まさに湘南の海辺で飲みたい」(木庭清美さん)味だ。
湘南ゴールドは06年に生まれた神奈川ブランドの希少なかんきつ類で、上品な甘さと華やかな香りが特徴。「本物の果実をかじったようなフレッシュでフルーティーな感覚がある」(谷さん)。微炭酸で「夏にごくごく飲める」(檀さん)。
(1)340ミリリットル(2)5300円(24本)(3)川崎飲料、http://shop.kawasaki-inryo.co.jp/
甘み抑え酸味強く表現(徳島県美馬市)
日本酒の酒蔵が手掛ける、徳島産のすだちを使ったサイダー。日本酒市場が落ち込むなか、新たな顧客を開拓すべく11年に作り始めた。「日本酒づくりで培った舌を生かし、味にはこだわった」という。「これぞ徳島といったご当地感前面のラベルに負けないくらい、香り、味わいともにすだちをストレートに感じられる」(松本さん)
甘みを抑え、酸味を強く表現した味は「渋い和の香り。白ワインとともにスプリッツァーにするのにぴったり」(小鷲さん)。
(1)245ミリリットル(2)205円(1本)(3)司菊酒造、http://gin-sato.jp/
香料不使用で自然な風味(和歌山県有田市)
1897年からミカンを作り続けてきた農園のサイダー。大手外資系ホテルや海外の日系百貨店に納入する100%ジュースと同じ果汁を20%使用し、「ミカンの味がしっかりしている」(清水りょうこさん)。
マーマレードなど加工品作りのノウハウを生かし、コクが出る漂白していない粗糖を採用。香料や着色料も使わないことで「ミカンの自然な香りと風味が生かされていて、体にすっと染み込むようなおいしさ」(下井さん)。
(1)250ミリリットル(2)3240円(10本)(3)伊藤農園、http://www.ito-noen.com/
炭酸強くパンチあり(神戸市)
1908年に発売し、約20年で姿を消したサイダーの復刻版。地元有志が合資会社を設立し、町おこしの一環で復活させた。「味を知る人から話を聞いて味をイメージした」。写真に残る看板をもとにラベルを作り、レトロな雰囲気に仕上げた。
炭酸が強く「パンチがあり好印象。後味さっぱりで夏でもさわやかに飲めそう」(里井さん)。「目が覚める味わい。全体に調和していて甘味もほどよい」(谷さん)。
(1)330ミリリットル(2)1500円(6本)(3)有馬八助商店、http://www.yoshitakaya.com/
さわやかで癖のない味わい(兵庫県西宮市)
1914年から味もラベルもほぼ変わらず販売を続ける定番品。天然のレモンを一部使ったフランス産の香料と砂糖にこだわり「上品で、まさに王道サイダーの味」(清水さん)に仕上げた。さわやかで癖のない味わいは「料理にも合い、皆に好かれそうな味。バーベキュー、パーティーにもお薦め」(里井さん)。
星模様が入った王冠や開け口に巻かれた銀紙、緑色の瓶が特徴的で「レトロで品がよい」(林さん)。
(1)330ミリリットル(2)3110円(24本)(3)布引鉱泉所、http://www.nunobiki.co.jp/shohin.htm
ハチミツ入り やさしい甘さ(鳥取市)
鳥取県産二十世紀梨のストレート果汁を使ったサイダー。ハチミツ入りでまろやかなやさしい甘さが特徴。「梨の清涼感そのまま」(木庭さん)、「ほとばしる梨感」(斉藤さん)と梨の味わいが前面に押し出されている。
「珍しい味だけに大勢の集まりに持って行くと注目されそう」(下園さん)。「やや苦みもあり、心地よいおもしろさがある。カモ肉やローストポークと合いそう」(谷さん)。
(1)250ミリリットル(2)248円(1本)(3)林兼太郎商店、http://osakenet.tv/tottori/
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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数に換算した。商品名(所在地)。(1)内容量(2)税込み価格(購入できる最低本数、送料別)(3)販売元と販売サイトのURL。スタイリング・西崎弥沙、写真は矢後衛撮影。
調査の方法 地サイダーに詳しい専門家に、取り寄せができて地域らしさがあるものを聞き23品を選出。試飲して、地域性を味に生かしている、清涼感、デザインなどの観点で順位を付けてもらい、集計した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
木庭清美(地域PRプランナー)▽小鷲崇文(京王プラザホテル メインバー「ブリアン」バーテンダー)▽斉藤賢太郎(dancyu編集者)▽里井真由美(フードジャーナリスト)▽清水りょうこ(清涼飲料水評論家)▽下井美奈子(スイーツコーディネーター)▽下園昌江(お菓子研究家)▽谷宣英(ホテルニューオータニ エグゼクティブシェフソムリエ)▽檀まゆみ(フードアナリスト)▽林律子(料理通信編集者)▽松本学(ご当地グルメ研究会代表)
[NIKKEIプラス1 2017年5月13日付]
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