我が家のキッチン、菜園に 採れたておいしい彩り
庭やベランダのイメージがある家庭菜園。実は、家の中でもしっかり育つ。キッチンに並べておけば、採れたて野菜が食べられる。おいしいだけでなく、癒やしのインテリアにもなる。
ベビーリーフにイチゴ、ミニトマト、芽キャベツ、ローズマリー、ミント、リーフレタス、九条ネギ、ミニ大根……。「思っているよりいろんな野菜が育ちます」。自宅の室内で約40種類の野菜やハーブを育てる料理研究家の鈴木あさみさん=写真=は、気軽に始められる家庭菜園として「イエナカ菜園」を勧める。
鈴木さんは埼玉県の農園で、土おこしやタネのまき方、苗の植え付けなどを教える講座を開いている。自宅のベランダでも育てていたが、ある日台風でめちゃくちゃに。そこで部屋の中で育ててみた。台所だけで育つもの、窓辺が適したものなど品種を増やし、「雨で出かけたくない日も新鮮なサラダが作れる」(鈴木さん)ほどになった。さながら、キッチンガーデンだ。
こだわりの鉢で癒やし空間に
室内で育てる利点は多い。まずは強風、寒さなど天候の影響を受けにくい。水やりも楽だ。冷暖房があるため、温度管理がしやすい。鉢や雑貨にこだわれば、台所周りや窓辺の雰囲気を変えられる。そしてもちろん「安心して食べられる」(鈴木さん)。
必要な道具は培養土やタネ、鉢底石、霧吹きなど。お金はかかるが、培養土は新しいものを使おう。水やりは根腐れしないよう表面を湿らす程度に。鉢は直径15~20センチ程度で高さ10センチ程度のものが扱いやすいが、長ネギは土の深さも必要。買わなくても「ペットボトルをカットしてマスキングテープを貼ればかわいい」と鈴木さん。
比較的育てやすいのが野菜の新芽のスプラウト類。日当たりがあまりなくても育つからだ。食用でないものもあるため、タネはスプラウト専用のものを選ぼう。間口の広いコップにコットンを敷いてタネをまき、霧吹きなどで水やりし、10日ほどで収穫する。品種によっては、水を毎日取り換える必要がある。
買った野菜の一部を残して育てる「再生野菜」も手軽だ。カブや大根、ニンジンは葉先を水に浸すだけ。育ってきた葉をカットし、じゃこなどといためて食べる。鈴木さんが勧めるのはネギ。根元5センチほどを残して根っこ部分だけを水に浸し、葉が伸びたところで鉢底石を敷き、培養土を入れた容器に植え替える。「値段が高めの九条ネギの根を育て、軟らかい葉を3回ぐらい収穫する」(鈴木さん)
イタリアンパセリやベビーリーフ、シソは土にタネを植え、適宜、肥料を与えて間引きして育てる。品種によっては指で筋をつけてまいたり、全体に散らすようにまいたり、水はけがよくない場合には鉢底石を入れたりなど違いがある。特性に合わせよう。
実のなるイチゴやトマトができれば、インテリアとしてもかわいい。ただ、室内で上手に果実を実らせるには注意点がある。花が咲いたら風通しをよくして受粉しやすい環境にするか、花を手で触るなどして受粉を手助けするか、が必要だ。ほかにも「トマトが赤く熟すには紫外線が必要」(サカタのタネ)。窓に紫外線カットフィルムなどが張ってあると生育にはマイナス。心にとめておこう。
日当たりや風通しは必要
室内菜園といっても、植物が育つ条件としては日当たりや風通しはいいにこしたことがない。外出時は高温になるのでレースのカーテンを引いたり、時々、日当たりがいい場所に移動してあげたりと、手間も必要になる。
また、根が深くなる根菜は難しい。畑や庭の土は害虫が出る可能性があるため「新品の培養土を使って、2回収穫したら替えた方がいい」(サカタのタネ)。同社ではぬるま湯でふやかし、使用後はゴミとして捨てられるココヤシの培養土(324円)を出している。
全国のファミリーマート・サークルK・サンクス約1万8000店は4月、ガーデンレタスミックスやバジルといった「育てるサラダ」(498円)などの販売を始めた。圧縮培養土とタネ、肥料をセットした同シリーズは昨年、約10万個を販売。「違う野菜も育てたい」と反響が大きく、今年はミニトマトやパクチーなども拡充した。
ガーデニングや農園体験人気を受け、様々なお手軽グッズが出ている。上手に利用し、手軽な自家菜園の一歩を踏み出したい。
(畑中麻里)
[NIKKEIプラス1 2017年5月13日付]
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