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ニッキィの大疑問

IoTは世の中どう変える? データが生活を便利に

2017/5/8付 日本経済新聞 夕刊

三井物産のIoTを活用した買い物かご お買い得商品を画面で知らせる

 「IoT」という言葉を、よく目にするようになったわ。インターネットに関わることらしいんだけど、なんだか絵文字みたい。これが普及すると、世の中はどう変わるんだろう。

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」について、神野美保さん(52)と世良真実子さん(27)が関口和一編集委員に話を聞いた。

 ――そもそも「IoT」ってなんですか

 「IoTは『インターネット・オブ・シングス』の略で、機械などをネットを介して互いにつなぐことを指します。そこで生まれるデータを分析すれば、生産現場を効率化し、生活を便利にすることもできます。例えばエンジンに様々なセンサーを付け、消費燃料や振動などのデータを吸い上げて、故障を事前に察知したりすることができます」

 「IoTの利用が進んだ背景には、10年ほど前から普及したクラウドコンピューティングという技術が見逃せません。様々なソフトやデータを巨大なデータセンターで一括管理することで、大量に集まるデータを様々な目的に使えるようになりました。いわゆるビッグデータ分析です。スマートフォン(スマホ)や自動運転技術などが登場したのも、こうしたクラウドやIoTのおかげです」

 ――IoTはどんなところで導入されているのですか

 「米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、ジェットエンジンや発電装置などにセンサーを付け、そこから吸い上げたデータを分析し、製品の性能や燃費の向上、長寿命化などに役立てています」

 「日本では建機大手のコマツが製品をネットでつないでいます。建機が壊れると工事が遅れてしまうので、普段からデータを管理し、壊れる前に修理したり、必要な部品を用意したりしています。さらに無人の大型建機の無線操作にも使っています」

 「身近では『おサイフケータイ』もIoTの例といえるでしょう。携帯端末を読み取り装置にかざすことで電子決済ができ、買い物ごとにポイントをためることができます。店側にとってもその情報を売れ筋の分析に役立てたりすることができます」

 ――海外に比べ日本は進んでいるのですか

 「ドイツはIoTの技術を使って製造業の生産性を高める『インダストリー4.0』という戦略を進めています。アナログの職人技に頼ってきたものづくりをデジタル化することで、製造現場や物流などを効率化する試みです。工場や店舗などをネットでつなぐことでサプライチェーンの改善にも努めています」

 「米アップルの携帯端末は米国本社で設計されますが、製造は中国の委託工場で行っています。設計部門と工場をネットでつなぐことで国際分業を実現し、米国の製造業は見事に復活したわけです」

 「ドイツの狙いもそこにあります。日本と同様に多くの中小企業を抱えており、そのデジタル化や再教育を促そうとしています。また中国や東南アジアなど製造業の発展が期待される新興国に対し、製造業のデジタル化で国際的な覇権を確立する考えです」

 「日本もコンピューターやロボットによる製造業の自動化には取り組んできました。しかし個々の工場や企業内の取り組みにとどまり、業界横断的につながっているわけではありません。工場のシステムも生産や在庫管理が目的で、ビッグデータとして利用できる環境はできていません。米国やドイツの動きを受け、日本も今、IoT戦略を真剣に進めようとしています」

 ――IoTの普及に向けた課題は何ですか

 「まず技術やデータ形式の標準化です。方式がバラバラではつながらないからです。またネットと機械がつながるようになれば、サイバー攻撃を受けたりするリスクも高まります。その意味でセキュリティー対策がこれまで以上に重要になります」

 「ソフト開発やデータ分析に強い技術者も必要です。日本はハードウエアの技術者はたくさんいますが、ソフトウエア人材が不足しています。IoTで日本が競争力を発揮するには、創造力を育む教育環境が求められています」

■ちょっとウンチク

スマート家電、中国が先行

 インターネットは金融や商取引、メディアなどサイバー空間で人間相手のサービスを変革してきた。一方、ネット革命の第2幕ともいえるIoTは、物理的な現実空間を大きく変えつつある。機械相手だけに端末の数も膨大で、2020年の普及個数は300億とも500億ともいわれている。

 ネットにつながるテレビや白物家電もIoT端末だが、実は先行しているのは中国だ。独調査会社GfKによると、スマート冷蔵庫の7割は中国で売られている。オランダではスマート体重計、米国では人工知能(AI)を使った音声認識スピーカーが人気だ。日本の家電メーカーもこうしたIoTの商品戦略を積極的に考えないと、世界のトレンドから取り残されかねない。

(編集委員 関口和一)

■今回のニッキィ
神野 美保さん 主婦。4月にエクアドルに行き、アマゾン観光を楽しんだ。「未開の地とのイメージと違って非常に快適で、大自然の中で日々の雑事を忘れることができました」
世良 真実子さん 情報通信メーカー勤務。生まれたばかりの姪(めい)がかわいくて仕方ない。「お店ではついベビー服に目がいきます。疲れた時は写真を見て癒やされています」

[日本経済新聞夕刊2017年5月8日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は5月22日の予定です。

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