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社会人、副教材で学び直し 政治や科学…時事ネタ満載

2017/4/18付 日本経済新聞 夕刊

平積みで並ぶ中高生向けの副教材(東京都千代田区の三省堂書店神保町本店)

 年度初めは大人も学び直したいと考える時期。書店をのぞくと、学習参考書コーナーに置かれた中高生向けの副教材を手に取る社会人の姿も見られる。どんな本が売れているのか探った。

 参考書のほか教科書も取り扱う三省堂書店神保町本店(東京・千代田)。6階の学習参考書売り場には新しい参考書や問題集が並ぶ。

 ポップな表紙で目を引くのが、帝国書院が2月に刊行した「世の中の動きに強くなる ライブ!現代社会2017」だ。同社が手がけてきた高校の「現代社会」向け副教材を大幅に刷新した。

 教科書を補う教材として学校でまとめて採用される副教材ということで、学校向けに8万部を刊行。これとは別に初版1万5千部で一般書店でも販売を開始した。価格は870円(税抜き)と手ごろで、重版も視野に入る人気ぶりだ。「社会人にも読んでほしい」(同社)との狙いから、監修はジャーナリストの池上彰氏に依頼した。タイトルに「ライブ!」を入れたのも同氏の強い要望で、随所にニュースコラムが入る。

■EU離脱も解説

 「政治や経済と聞くと堅苦しく感じる高校生のために、直近の身近な話題を取り上げた」と担当の山口優氏。トランプ米大統領誕生や英国のEU離脱、東京・築地市場の豊洲移転問題など話題のニュースも紹介する。「マイナス金利」「円高」など知っておきたい用語もわかりやすく解説し、「政治や経済の基礎を勉強し直したい社会人の要求に応えられる内容になっている」(山口氏)。

帝国書院の地図帳「新詳高等地図」はインターネットの普及の様子を伝える

 同社は、高校生向け地図帳のロングセラー「新詳高等地図」で有名だ。緑色の表紙は以前と変わらないが、世界各国のインターネットの普及状況など最新のデータも盛り込む。こちらも一般向けに販売し、現行の版が出た昨秋以降だけでも2万2千部を一般書店向けに刊行。同社によると、毎年春には書店での売り上げが伸びるという。

 地理教科書・地図帳を発行する二宮書店の「データブック オブ・ザ・ワールド 2017年版」も社会人に人気の副教材だ。「統計要覧」編と「世界各国要覧」編の2部構成で多くの高校が採用。500ページ近い充実した内容ながら650円(同)と低価格が売りだ。

 理科では、数研出版の高校生向け副教材「視覚でとらえるフォトサイエンス図録」シリーズの「生物」「物理」「化学」が売れ筋だ。「科学が日常の暮らしに結びついていることを理解してもらいたい」(同社編集局)との狙いから、最近よく話題に上る原子力発電の仕組みやiPS細胞などの特集記事を掲載。スマートフォンで実験映像などを視聴できるアプリも用意した。全ページカラーで、いずれも価格は1100円前後(同)だ。

■部数多く「お得」

 「学び直し」の火付け役とされるのが、定評ある教科書をベースにした山川出版社の「もういちど読む」シリーズだ。「日本史」「世界史」など全10シリーズの累計発行部数は120万部。解説とコラムを充実させて一般向けに編集した。

 同社販売促進部の平井里枝氏は「2009年の刊行当初、40~60代の読者層を想定していたが、今は20~30代のビジネスパーソンにも広がっている」と話す。「日本史」と「世界史」は、カラーページやコラムを大幅に増やした改訂版を7月にも刊行する予定だ。

 副教材の魅力の一つは価格の安さ。学校単位での需要が見込めるので発行部数は多くなり、その分、価格が抑えられる。もう一つは信頼性の高さ。教科書に準拠した内容で、基礎となる知識が偏りなく得られる。こうした点が学び直したいと思う大人にも受けているようだ。

(文化部 近藤佳宜)

[日本経済新聞夕刊2017年4月18日付]

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