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ビジネスリュック利用広がる 「不相応の印象」なお

2017/4/17付 日本経済新聞 夕刊

 20~30代を中心に、リュック型のビジネスバッグを利用する人が増えてきた。両手が空いて自由に使える機能性に加え、薄型化でファッション性も備わってきたからだ。だが、仕事相手の世代や業種によっては抵抗感もなお残る。背負うべきか、背負わざるべきか――。スマートな使い方を紹介する。

リュック型のビジネスバッグを利用する人が増えている

 伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)紳士かばん担当の田中貴之さんによると、ビジネスバッグで背負えるタイプの品ぞろえが充実してきたのは、昨年あたりから。手提げやショルダーにもなる「2way」「3way」と呼ばれるものも含め、同店ではビジネスバッグ全体の約1割を占める。売れ筋は軽さや防水性を強調した4万円前後の商品。入社数年目の若手の買い替え需要も目立つ。

■広がる利用層

 田中さんによると、以前の「重い荷物を運びやすく」というニーズから、最近は「両手の自由度」が重視されている。「手をつないで子供を保育園に送っていきたい」との声も。「すっきりしたデザインを」との要望は多く、薄型化も進む。田中さんは「今後は奥行きのあるポケットが目立たないデザインや、カジュアル感を抑えたレザー製が充実してくるのでは」とみる。

 機能性とファッション性の両立で利用層は広がるが、ビジネスマナーの専門家は安易な利用に注意を呼び掛ける。

 リュックのビジネスシーンへの登場は、海外のIT(情報技術)やクリエーティブ系の業界が最初とされる。アパレル業界の勤務経験もある日本能率協会(東京・千代田)の平井亜矢子さんは「クリエーティブ系の業界であれば、型にはまらないことも評価される」側面があったという。ただ、「もともとはアウトドアのスタイル。気を抜いている、仕事を軽んじているという印象を持たれる可能性はある」と指摘する。

 では、どんな場面で利用できるのか。平井さんは「迷った場合はまず先輩社員に聞くべきだ」という。その上で、「初対面の相手、特に目上の人と会う場合は、まずは利用は避けた方が無難」とアドバイスする。自分の印象を下げない工夫をすることがビジネスマナーの基本だからだ。

 NPO法人「日本サービスマナー協会」(東京・中央)の講師、伊藤厚子さんは「格式や伝統を重んじる社風の会社に訪問する際は控えた方がいい」と話す。クールビズ期間でも、ネクタイと上着を着用する場面もある。そうした現場を、リュックを避ける際の基準にしたい。

 リュックを利用する場合も、カジュアル過ぎないようにする注意は必要だ。最近は革製品も少なくないが、リュック型はナイロン生地が多い。「そもそもナイロン製品とスーツのコーディネートは難しいが、リュックにカジュアルジャケットでは、くだけ過ぎ。シワがつきにくい化繊混合の生地のスーツを選ぶといい」(平井さん)という。

 肩ひもが長すぎるのも、だらしない印象を持たれる。例えば、女性向けのスーツは男性よりソフトな素材も多いので「肩ひもの食い込みは生地を傷める。チェックと手入れを欠かさずに」(伊藤さん)とアドバイスする。

 時折見掛けるのが、リュックを背負ったまま、企業の受付などに向かう若者の姿。取引先を訪れる際は、建物に入る前にコートを脱ぐのがビジネスマナー。リュックも手に持ち直してから臨みたい。

 いざ面会の場面で、床に置いたリュックが倒れたり、中の書類が曲がっていたりでは失礼に当たる。形崩れしないデザインで、書類の大きさに合ったサイズを選ぼう。

■人混みで配慮を

 街中での扱いにも注意だ。電車やエレベーターなど混雑した空間では、前に抱えるようにしよう。周囲に当たり、気付かないうちに不快感を与えかねないからだ。エスカレーターの上りで背負ったままだと、後ろの人に圧迫感を与えることもあり、「人混みでは特に、他人の気配、パーソナルスペースを意識する必要がある」(伊藤さん)。

 リュックの利用法に限らないが、公共の場で他人に不快感を与える振る舞いはSNS(交流サイト)による拡散などで、思わぬ反響を呼ぶこともある。社章や社名入りの封筒で勤務先も特定されかねない。平井さんは「社会人は常に会社を代表する立場になり得る。どこで誰が見ているか分からない、という姿勢で行動してほしい」としている。

[日本経済新聞夕刊2017年4月17日付]

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