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おまけ3万種55億個! グリコ、ドキドキ届け95年

NIKKEIプラス1

2017/4/15付 NIKKEIプラス1

 キャラメルの「グリコ」は2月で発売95年を迎えた。ドキドキしながらおまけの箱を開け、菓子を味わうのも忘れて遊んだ人は多いはず。3万種類、55億個というおまけの歴史をたどった。

 「シマウマちゃん、遊びましょ」。4歳の娘が木製のシマウマを片手に持ち、スマートフォン画面に語りかける。グリコの最新のおまけは動物10種類の木のおもちゃ。アプリをダウンロードし、おもちゃの画像を取り込むと、画面の中の草原をパカパカ歩き出す。娘は夢中だ。指で触ると走る。夜になると画面も暗くなり動きがゆっくりに。108円のおまけの進化に驚く。

 グリコの発売は1922年。キャラメルで先行していた森永製菓や明治をはじめ、競合が多く苦戦。苦肉の策でたどりついたのがおもちゃのおまけだった。当初は小物問屋から仕入れた素朴な人形などだったが、キャラメルとは別の小箱に入れ始めたら「何が出てくるか分からないドキドキ感」から大ヒット。中でも初期の人気作は重々しく光る金属製のメダルだった。

 江崎グリコの資料室を訪れると、表彰メダルのように首掛けひもが通せる円形のメダルの表面には、口を真一文字に結んだ西郷隆盛がにらんでいる。ふくよかな顔、着物の襟や肩のしわまで立体的に浮かぶリアルな姿だ。1箱5銭の菓子のおまけには高価なので、全ての商品に入っていたわけではない。これが入っていたら「やった!」と大声を上げること請け合いだ。

 「実は大蔵省の造幣局に製造を依頼した時期があるんです」と社史資料室の窪田精一郎さんは話す。「造幣局のあゆみ改訂版(平成22年)」を読むと「1930年、グリコのおもちゃとして乃木将軍など歴史上の人物を刻んだ銅製のメダル60万個を製造し、人気を博した」とある。リアルなメダルを作ってほしいと何度も頼み込んで実現した。今もコレクターの人気は高い。

 企画、デザイン、発注まで社員が担当するようになったのは35年ごろから。「子どもの感覚を磨き、情操を養い、知能を練るもの」との思いを込めた。当時の紙人形は時代を感じる。「交通道徳を守りませう」と書いた踏み台の上に「進メ」「止レ」と書いた信号機があり、ひげを蓄えいかめしい顔の巡査の立体人形が立つ。おもちゃを入れる小箱を組み立てると「たばこ」「サカナ」「カンヅメヤ」など看板を掲げる商店になる。並べれば、繁盛するミニチュア商店街が出来上がる。

 当時の専従おまけ係の宮本順三さんはおもちゃ熱が高じて戦後、同社を辞めた後も、父の工場を継いでメーカーとしてグリコのおまけ作りに関わった。デザインしたおまけは約3000種になるとか。

 三種の神器とも呼ばれた家電製品は、おまけでも人気のテーマだ。55年ごろに登場した洗濯機のおもちゃを見ると、回転するローラーの間に洗濯物を通して水を絞る簡易脱水装置を再現していて楽しい。小さなハンドルは実際に回せる細やかさだ。

 家庭用テレビゲーム機、大型ゲームセンターの台頭で子どもの遊びが変化した。子どもが楽しむのはもちろんだが、親が与えたくなるおもちゃへと路線変更したのは87年ごろから。素朴な手触りを大事にする木製のおもちゃが登場した。2001年発売の木の機関車は、上下に揺れるコミカルな動きをして走る。部品は大きめで、ぶつけても丈夫。飲み込む事故が起きないよう心を配る。

 01年発売のタイムスリップグリコはフィギュア製作の海洋堂と組み、昭和30年代をテーマにした大人も納得のおもちゃがあふれている。例えば星飛雄馬の父、一徹がひっくり返しそうなリアルなちゃぶ台に朝飯が載る。しょうゆ差しや急須、湯飲み、煮物にたくわん2切れ、メインは目刺し2匹。今にもご飯をよそおうと、しゃもじを添えた電気釜まで再現する。細部に凝った同シリーズは約3年間で20種類4000万個を売り上げたというから納得だ。

◇     ◇

■はやり廃りなく愛される

 北原照久・横浜ブリキのおもちゃ博物館館長の話 僕は1948年生まれ。子どものころ、お小遣いをもらってグリコを買いに行くのはうれしかった。箱にどんなおまけが入っているか分からないから買うたびにときめきを感じた。アイロンやミシンに「これかい?」と思う一方、ブリキの飛行機はうれしかった。

 そのときは捨ててしまったが、大人になり収集を始めてから、そのすごさが分かった。グリコはまさにおまけの代名詞。おまけを付ける発想は大阪は玩具業者が多く、「まけてよ」と言いやすい土地柄から出たものだと思う。おまけ付き菓子は他にもあったが、おまけを箱に入れるというアイデア、アニメキャラクターを使わず家電や車など日常のものがテーマで、はやり廃りがないことが愛されてきた理由だろう。

(畑中麻里)

[NIKKEIプラス1 2017年4月15日付]

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