フレーバーも豊富で、素材や焼き方にこだわったものが多い。
ぽかぽかした陽光の下、絶品のシフォンケーキはいかが。
米国生まれの「薄い絹織物」
シフォンとは英語で「薄い絹織物」を意味する。発祥は米国だ。保険外交員で料理愛好家だったハリー・ベーカーが1927年に考案した。バターではなく植物油を使うことで、柔らかい食感を実現した。
ふわふわの生地はしっとりとした食感で、口当たりも柔らかい。シンプルな分、素材や混ぜ方、焼き方次第で食感も風味も変わってくる。家庭でも作れるだけに、今回ランクインした店は素材や製法にこだわり、個性的なシフォンを焼き上げた。
米国生まれだが、「柔らかい食感を好む日本で特に親しまれている」(こどもパティシエ代表の山内奈月さん)。フルーツや生クリームを添えるなど、楽しみ方も幅広い。一口運べば、幸せが訪れる。
粒々バニラと洋酒の共演
有名パティスリーが手掛けるバニラのシフォンケーキ。香り高いマダガスカル産のバニラビーンズを使い、コニャックを入れ風味を引き立てた。「バニラビーンズの華やかな香りとつぶつぶ感、洋酒との相性がいい」(山内奈月さん)
牛乳を多く使うことで「蒸気となった牛乳が芯まで通り、うまみが凝縮される」という。「クリームなしで生地そのものを楽しみたい」(下園昌江さん)ほど、風味がぎっしり詰まっている。朝食のパンのように軽い口当たりながらも、弾力がある。「外側のしっかりした焼き色と、中の柔らかな生地との対比がいい」(平岩理緒さん)、「しっとり感、ふんわり感、焼き色やルックスなど、トータルでいい」(福田淳子さん)
(1)直径約20cm、高さ約10cm(2)税込み価格 1890円(3)販売サイト http://shop.cake-cake.net/es_koyama/cate1_select.phtml
ココア2種ブレンド クリーム添えて
シフォンケーキが人気の手づくりケーキ店。普通のココアと深煎りのココア、2種類をブレンドすることで風味を引き立てた。「チョコレートの風味が強い」(斉藤賢太郎さん)。国産の小麦粉を使い、油分や甘さは控えめ。「しっとりとしつつも軽い食感」(下迫綾美さん)。生地は生クリームを添えて食べるよう配合してある。一般のケーキよりも乳脂肪分を抑えた生クリームを別売りで販売しており、「クリームと合わせることでよりおいしくなる」(浜口恭子さん)。
(1)直径約17cm、高さ約11cm(2)2350円(生クリームセット)(3)http://www.joel80.com/
卵しっかり シンプルな優しさ
長崎のシフォン専門店。長崎の特産「茂木ビワ」の葉で育った鶏の卵、北海道のてんさい糖、一番搾りの菜種油を使うなど素材にこだわった。ふわふわの生地は「軽いのに水を含んでいるようなしっとり感」(山内さん)。卵の力だけで膨らませ「卵の味がしっかりしている」(高橋洋江さん)、「シンプルで優しい」(山本諭さん)。取り寄せはカットのみ。
(1)1カットは「直径約21cm、高さ約12cmホール」の12分の1(2)7カット1750円(3)http://momijiya.net/
カラフル華やか 香るレモンで爽快に
東京のシフォン専門店。赤、黄、緑の3色がマーブル状に並び、見た目にもきれいな野菜のシフォンだ。トマト、ホウレン草、カボチャをペースト状にして練り込んだ。担当者は「昔見たパン屋のサンドイッチがカラフルだったことに着想を得た」と話す。香り付けと野菜の臭み消しにレモン果汁を使った。野菜の甘みに爽やかさが加わり、さっぱり食べられる。
卵の力だけでふわふわに仕上げた。「色がきれい。ふわふわしっとりで弾力もある」(高橋さん)。「ほのかなレモンの香りが爽やか」(平岩さん)。チョコや紅茶など様々なフレーバーの詰め合わせもある。
(1)直径約17cm、高さ約7cm(2)3600円(3)http://www.la-famille.com/
米粉でもっちり 舌触り上質
小麦粉ではなく米粉を使ったシフォンの専門店。100%国産の米粉を使い、低カロリーでグルテンフリーのシフォンに。砂糖はミネラルが豊富なきび砂糖で、シフォンにコクを与えた。「シンプルなシフォンなので、なるべく自然に近い素材を使うよう心がけた」という。北海道産の手搾り菜種油を使うことで、卵の風味や米粉の香りを際立たせた。メレンゲの力で膨らませた独特の食感は「まさに絹織物を思わせる上等な舌触り」(斉藤さん)。「もっちりした食感でありながら、ほどよい食べ応えもある」(下園さん)。
(1)直径約21cm、高さ約12cm(2)3050円(3)http://otaco-sweets.com/
クルミの食感楽しいコーラ味
横須賀らしいシフォンを、と店主が考案したコーラ味のシフォンケーキ。ペリー提督が浦賀に来航した際、炭酸飲料を飲んでいたとの説にちなんだ。1ホールにつきコーラは40ccと香り付け程度。レモンとラム酒で爽やかに仕上げた。後からほんのりコーラが香る。
「クルミがゴロゴロあり、どこを食べても風味が味わえる」(下井美奈子さん)。北海道産の小麦を使い、こめ油を採用するなど素材にもこだわった。卵だけで膨らませ、「小ぶりなので2人で食べるのにちょうどいい」(marimoさん)。
(1)直径約14cm、高さ約9cm(2)1620円(3)http://www.yokosuka-chiffon.jp/index.html
アイス載せても朝食にも
生のバナナをすりつぶして生地に混ぜ、焼き上げた。かみしめるたびにバナナの風味が口いっぱいに広がる。「バナナの味とふんわり食感が合っている」(福田さん)。来店客に「朝にシフォンケーキが食べたい。バナナ味なら朝食にも合う」と言われたのがきっかけという。
素材にこだわり、地元・福島県の卵の力でふわふわに仕上げた。「手作り感があり、家庭的な味わい」(下井さん)。表面には砂糖をまぶし、甘さをプラスした。おすすめは生クリームやアイスクリームのトッピング。「子どもも喜びそう」(下迫さん)。手ごろな価格にも評価が集まった。
(1)直径約17cm、高さ約12cm(2)980円(3)http://www.saltbox.jp/
厳選卵で口溶けなめらか
地元の紅茶店から仕入れた香りの強いアールグレイの茶葉をふんだんに使った。茶葉を細かくし、生地に練り込む。「紅茶の香りが広がり、口溶けもなめらか」(山本さん)。ふんわりとした食感を実現するため、卵にこだわった。静岡産の卵を使ったきめ細かいメレンゲは、気泡にバラツキがなく、卵だけで大きく膨らんだという。
「優しい香りで、食べながらリラックスできる。自分へのご褒美にしたい」(marimoさん)。「ふんわりとした食感にアールグレイがよく合っている。インパクトのある味」(福田さん)。
(1)直径約17cm、高さ約9cm(2)1900円(3)http://www.pompondahlia.com/index.html
素朴な香ばしさ 郷愁誘う
ネット通販中心のシフォン専門店。砂糖を使わず、メープルのみで甘さを出した。風味を増すため、メープルシュガーにメープルシロップを加えている。シフォンは通常、低温で長時間かけて焼き上げるが、高めの温度で短時間焼くことで、風味をとじ込めた。「メープルが香ばしく、素朴で懐かしい」(下園さん)
北海道産の小麦粉、一番搾りの紅花油、オーガニック認証を取得したメープルシロップを使用。神奈川県内の朝採り卵を使って膨らませ、「食感がなめらかで、甘みと香りがいい」(浜口さん)。
(1)直径約20cm、高さ約11cm(2)4212円(3)http://yokohamachiffon.com/index.html
上部カリカリの高身長
1976年からシフォンを販売している日本のシフォンの草分け的存在。高さが16センチと他のシフォンより高い。ふわふわの食感を保つため、断面積を大きくした。「見た目のインパクトがあり、楽しい」(山本さん)。高さがあるため上部にはしっかりと火が通り、焦げ目ができた。カリカリとした食感も楽しめる。
油脂類を加えず、卵白をふんだんに使い高たんぱくでヘルシー。卵は気温によってタイプが異なるため、その都度混ぜ方を変えている。「メープルの味がしっかり出ていて甘みが強い」(下迫さん)。
(1)直径約16cm、高さ約16cm(2)2052円(3)http://www.flavor.co.jp/
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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数にした。店名、フレーバー。カッコ内は所在地。(1)サイズ(2)税込み価格(送料別)(3)販売サイト。スタイリング・西崎弥沙、写真は矢後衛撮影。
調査の方法 シフォンケーキに詳しい専門家に、取り寄せができるか、全国の百貨店で入手できるおすすめのシフォンケーキを挙げてもらい、22品を選出。名前を伏せて試食し、食感が優れている、風味がいいなどの観点で1~10位まで順位を付けてもらい、編集部で集計した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
斉藤賢太郎(dancyu編集部)▽下井美奈子(スイーツコーディネーター)▽下迫綾美(お菓子研究家)▽下園昌江(お菓子研究家)▽高橋洋江(シフォンケーキ愛好家)▽浜口恭子(フードアナリスト)▽平岩理緒(「幸せのケーキ共和国」主宰)▽福田淳子(お菓子研究家)▽marimo(マリモカフェ代表取締役)▽山内奈月(こどもパティシエ代表)▽山本諭(菓子ジャーナリスト)
[NIKKEIプラス1 2017年4月15日付]