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社会人になって間もない新入社員にとって、ビジネスマナーの基本のきが「挨拶」だ。学生時代も挨拶はしていたはずだが、ビジネスの場にふさわしい基本を今の時期にしっかり身に付けておきたい。気を付けるべき点をまとめた。

社員研修などを手がけるマネジメントサポートグループ(東京・港)の代表・古谷治子さんは、挨拶の基本を「あいさつ」という言葉になぞらえて、「あ=明るく、アイコンタクト、い=いつでも、さ=先に、つ=続いてお辞儀」と教えている。

相手の目を見て

笑顔で挨拶すれば好印象につながる

笑顔で挨拶すれば好印象につながる

挨拶は「語先後礼(ごせんごれい)」、言葉が先で後からおじぎするのが基本。相手の目を見て「おはようございます」と言葉に出し、続けておじぎをしよう。おじぎをしたら頭を起こし始める前にいったん動きをとめると、丁寧な印象になる。

ビジネスマナー研修の講師を務める三上ナナエさんは「個別に挨拶するときは『○○さん、おはようございます』と名前を呼ぶことも好印象につながる」と助言。「一流の店でサービスを受けると客もその場に合った態度を取るようになる。きちんとした挨拶を心がければ相手もそれに合わせて接してくれるようになる」(古谷さん)。

広告会社オリコム(東京・港)の大塚尚司社長は、営業畑を35年歩いてきた。「新入社員時代はテレビ局担当で、誰にでもアイコンタクトを取って大きな声で笑顔で挨拶を心がけた」と話す。そのうち先輩から「テレビ局の人が君の顔を覚えてくれたみたいで、『元気のいい新人がいる。名前は?』と聞かれた」と褒められた思い出がある。

逆に挨拶ひとつで仕事に悪影響を及ぼすこともある。三上さんのマナー研修受講者からは、取引先の会社を訪ねて誰も挨拶をしてくれない場合に「よそものを受け入れない風土のようで、取引に不安を感じている」という反応があるという。元気に明るく挨拶するだけで名前を覚えてもらえ仕事がスムーズに進むことがあるのだから、この機会を逃す手はない。

三上さんは「今の若者の中には、知らない人には声をかけないように、と教育されてきた人もいる」と、現代の教育事情を分析する。その上で「習慣を変えるのは大変かもしれないが、人事担当者からは『まだ仕事ができない新人のうちは、挨拶も評価対象の一つ』という話も聞く。オフィスや取引先では勇気を出して知らない人にも挨拶しよう」と話す。不安なときは、すれ違いざまに会釈するだけでも心証はよくなる。

大塚さんが違和感を感じるのはイヤホンをつけたまま出勤する社員だ。イヤホンをつけていると声をかけられても聞こえないことがあるし、コミュニケーションを拒絶しているイメージもある。「英会話の勉強をしている人もいるだろうが、それでも最寄り駅についたら外した方がいい」(大塚さん)

苦手な相手にも

苦手な相手や返事をしてくれない人に対しては挨拶をためらうこともあるだろう。客室乗務員経験を持つ三上さんは「当時、厳しい先輩クルーと組むときは気が重かったし声をかけにくかった」と振り返る。しかし率先して先輩に「おはようございます。今日はご一緒できてうれしいです! よろしくお願いします」と挨拶に行く同僚もいた。厳しいと思っていた先輩も「そんなふうに言ってもらえてうれしいわ」と笑顔になり、コミュニケーションが活発になった。新人は勝手に苦手意識をもたず、自分から積極的に挨拶したほうが指導を受けるチャンスにもつながる。

上司や先輩が定時の退社時間を過ぎてもまだ仕事中に、自分の業務を終えて先に帰る時はどうしたらいいのか。「何も言わずに帰ると心配するし、頼みたい用事や翌日の確認もあるかもしれない。打ち合わせ中なら『お話し中すみません。お先に失礼します』と声をかけるか、会釈で帰る意思を伝えるといい」(古谷さん)

挨拶してもシーンとして返事がない職場もあるかもしれないが、三上さんは「新入社員はオフィスに新しい風を運ぶ役。『挨拶は大切なのに最近忘れていたな』と先輩に気づきを促す役割も担っている」と話す。明るい挨拶で、職場に新入社員ならではの新風を吹かせよう。

(ライター 加納 美紀)

[日本経済新聞夕刊2017年4月10日付]

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