片づけで「ときめく」人生を発信 近藤麻理恵さん
講演後、米国人の女性に声をかけられた。「あなたが教える片づけを繰り返すうちに、自閉症の息子が話せるようになったの! こんな変化があるなんて驚きよ!」
「声をかけてもらってすごくうれしかったです。『片づけによって人生がときめく』というメッセージをより多くの人に伝えたいと思っています。日本人でも外国人でも響くポイントが同じなのが面白いです」
モノを手にとってみて、自分が「ときめく」かどうか問うてみる。「ときめき」とは心が弾む感覚だ。ときめいたら手元に残し、ときめかないなら手放す。それが「こんまりメソッド」だ。7年前に出した著書「人生がときめく片づけの魔法」がミリオンセラーとなり、脚光を浴びた。海外41カ国で翻訳が決まり、活躍の場は世界に広がる。
「いきなり注目されるようになって初めはとても戸惑いました。もともとそんなに目立ちたいタイプではないんです。家で黙々と片づけるのが好きな『片づけおたく』ですから。海外から講演などのオファーが増え、毎月のように海外出張に行っています」
「先日、初めて英語だけで講演をしました。逃げ出したくなるほどのプレッシャーを感じましたが、開き直って自分なりに成果を出すことができました。そのとき感じたのは、片づけのおたくぶりは世界中でウケるんだなということ。やはり私の片づけ人生は相当変わっているようです」
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日本で生まれ育ち、自分の生活の中から片づけ術を編み出した。国内外で受け入れられる一方で、海外では思いも寄らない反応に直面することがある。
「ある英国人から『ときめかないけどどうしても捨てられないモノがある』と相談を受けました。それは先祖代々受け継がれてきた古い食器。自分だけで捨てる判断は絶対にできない、ということでした。モノによっては歴史を背負っていて、ときめくかどうかだけでは割り切れないこともあると知りました」
「私が実践する"儀式"を疑問視する米国人もいました。モノを捨てる前に『ありがとうございました』と声をかける儀式です。日本人なら割と抵抗なく受け入れてくれるのですが。私たちは身の回りのモノに助けられたり支えられたりして生きていると説明したら『面白い!』と理解してくれました。通じた、とうれしくなりました」
「片づけは人生をときめかせるための手段」と説く。重要なのは、片づけた後にどのような人生を送るかということだ。
「米国では知識層を中心に、より良い人生を送る自己啓発の方法論として、私の本に興味を持ってくれています。哲学的なところで共感し、そのための手段として片づけのメソッドを習うアプローチです。日本では主婦向けの雑誌で取り上げていただくことが多かったのですが、海外ではまず経済誌やビジネス誌などで取り上げていただいたのも驚きでした」
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一緒に働くメンバーも国際色豊かになった。
「メンバーは東京、香港、米国と、それぞれの拠点で活動しています。出張も多いため、ミーティングはオンラインで。時差を考慮して設定するのがなかなか大変です。たまに時差の計算を間違えて欠席するスタッフがいたりと、ハプニングもありますが、にぎやかに仕事をしています」
外国人コンサルタントの育成にも力を入れている。
「こんまり流の片づけアドバイスができる人を、世界中で増やすのが夢です。自分の考えを伝えるための講演も大切ですが、片づけで悩む人に直接会って一緒に解決していきたい。自分のメソッドを伝えられるコンサルタントを育てたいです」
私生活では1歳半の長女と昨年10月に生まれたばかりの次女の子育てに奮闘中だ。
「片づける時間もないです。でも長女が生まれる前に、集中的に片づけを行う『片づけ祭り』を夫とやったので、散らかっていても30分あれば元に戻せます。あまりに疲れていると、できない日ももちろんありますが……」
「これからは、自分の子育ての経験も通して片づけの研究をさらに深めていきたいです。子育てに仕事に日々バタバタしていますが、今自分ができることを少しずつ積み上げていこうと思います」
[NIKKEIプラス1 2017年4月8日付]
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