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日記はインターネット上に公開するブログと違い、自分のために書くもの。読み手を気にせず書け、深く自分と向き合える良さがある。続けることで自分の職業上の成長につなげている人も少なくない。ビジネスマンに参考になる手法を探った。

店のカードを貼り込んだ日記帳

店のカードを貼り込んだ日記帳

企業などの教育計画を設計するジェイ・キャスト(東京・千代田)常務執行役員で熊本大学大学院の非常勤講師でもある寺田佳子さんは、出先での発見やひらめきを日記に書き留めることがよくある。

愛用しているのはポケット判の日記帳で、スマートフォンや財布と同様、常に持ち歩いている。出先で気付いたこと、感動したこと、面白いと思ったことをその都度一言でメモする。ほかにも映画のワンシーンや、出会った人の言葉、雑誌のエッセーの一文、ランチのメニューなども書き込む。さらにチケットや写真も貼ることがある。

色使い分け整理

書き込みについて、さらにインターネットで調べることも日常的だ。結果は日記帳に書かず、情報を保存・整理できるアプリケーションのエバーノートで管理する。「日記帳の該当部分に『○e』とマークを書き込み、エバーノートに詳細情報があるとわかるようにしておく」と寺田さん。紙の日記とデジタルで情報を立体管理するわけだ。

寺田さんは道具にもこだわる。日記帳は書き心地や手触りの良い紙質で、ケイ線のないタイプ。ペンについては「様々な色を使い分け、感情的なコメントは赤など暖色系、人物名や連絡先はブルー系で書く」という。

日記をより仕事と直結させたければ、システム手帳の日記欄を活用する方法もある。システム手帳を開発・販売する日本能率協会マネジメントセンター(東京・中央)の矢野真弓販売促進部長は「見開き2ページごとに1週間の予定を記入するウィークリータイプがおすすめ。スペースにゆとりがあるので簡単な日記を書き込める」と話す。

その場合、日記部分と予定の記述が混同されないよう書く項目を絞ることが大切だ。「その日終えた仕事」「誰かに聞いておきたいこと」「反省点」などが対象になる。

矢野さんは日記部分の使い方について「その日終えた仕事を書いておけば、仕事にどの程度時間がかかったか後から把握できる。仕事の段取りをうまく組めるようになり、反省点を書いておけばミス防止につながる」と話す。新人は反省ばかりに目が向きがちだが、「事前準備したのでうまくやれた」「○○さんが助けてくれた」など、良かったことも書いておくと前向きになれるだろう。

お手本の人想定

一方「日記で自分を振り返ることで成長できる」と話すのは北海道大学大学院経済学研究科・経済学部の松尾睦教授だ。「タスクを全部終えた」と簡単に振り返るだけでなく、自分の仕事ぶりを深く見つめ、どうしたらもっとうまく仕事ができるか考えるのだ。松尾さんはロールモデルを想定し、その人ならどうするか考える方法をすすめた。「自分は業務後に飲みに行ってしまったが、あの先輩ならその時間で次の段取りをしたかもしれない」という具合だ。

終えた仕事を「マスト(指示された仕事)」「キャン(できる仕事)」「ウイル(今後につながる仕事)」に分類し、自分のこだわりを振り返るのもいい。「担当業務は大切だが『自分だからできる』『自分がやりたい』などの自分らしさが加わるとなおよい」(松尾さん)

心理学にくわしいジャーナリストの佐々木正悟さんはエバーノートのほか、日記アプリで書いた日記を事あるごとに読み返すという。「あらゆる困った状況は習慣から生み出される。習慣には必ずきっかけがある。きっかけに早めに気づけば、習慣を見直し、困った状況に歯止めをかけられる」と話す。

仕事上の日記にはあえてポジティブなことしか書かない人もいるが、佐々木さんは悩んでいることをありのままに吐き出してもよいと提案する。「人はいつも何かと格闘している。あの時も頑張っていたんだ、と確認できれば、それが将来の励みになる」という。

(ライター 西川 敦子)

[日本経済新聞夕刊2017年3月27日付]

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