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映画愛、マンガで熱く吐露 「怒りのロードショー」

2017/3/22 日本経済新聞 夕刊

映画について語る漫画の刊行が相次いでいる

新旧の名作映画について語るマンガが人気を博している。批評は抑え、分かりやすくオススメ作品の魅力を紹介。熱心な映画ファンではない層にも受け入れられている。

「部屋で『ロッキー2』を見てたら走りたくなったんだ!」「『コマンドー』と『ターミネーター』だけじゃシュワ愛が足りてねぇよ!」「ゾンビは歩いてこそゾンビだな」

1月に刊行された「怒りのロードショー」(KADOKAWA)は、映画愛にあふれた話の数々を、映画好きの男子高校生4人がひたすら熱くしゃべるという設定で、オススメ映画を紹介する。話題に上るのは、アーノルド・シュワルツェネッガーやシルベスター・スタローンなどの有名俳優。ジャンルも、ドラマからアクションまで幅広く、作品は「ニューシネマ・パラダイス」から「スター・ウォーズ」まで多彩だ。

■SNSで話題に

「怒りのロードショー」(KADOKAWA)の一場面(C)McClane

著者であるマクレーン氏の創作の原点にあるのは、子供の頃に父親やおじとレンタルビデオ店で映画を借りて見た体験や、高島忠夫や水野晴郎が解説を務めたテレビの映画番組に親しんだ記憶。「作品選びは自分がおもしろいと感じられたか」だと言い切る。

人気に火が付いたきっかけはネットだった。2014年、ウェブに無料で本作の発表を始めると4~5話目あたりで「映画愛がほとばしっている」「読後に映画が見たくなる」などと交流サイト(SNS)で話題になった。これに目を付けた版元が声をかけ、単行本化が決定。「誰もが見られるネットだからこそ、コアな映画ファンにも届いたのではないか」とマクレーン氏。売り上げも上々で、早くも重版が決まった。

アラサー(30歳前後)の独身OLが内に秘める映画への思いを熱くつづった「木根さんの1人でキネマ」(白泉社)も、ネット掲載がきっかけで人気が出た。「最初は雑誌に掲載したが読者からの反応がなく打ち切りの危機に。ネットでなら、と編集者に言われ、連載を継続したところ、SNSで共感の輪が広がった」と著者のアサイ氏は話す。

作中に登場する木根さんは、好みがアクション・SF・ホラーと偏っているためか、友人らと好きな映画について語り合えないでいるが、誰かと映画の話をしたいと願っている。アサイ氏は「好みなんて人それぞれと言ってしまえばそれまで。人と違う意見をぶつけ合うことが映画を語るということだと思う。『仲良くけんかしよう』が裏側にあるテーマ」と説明する。

■累計部数15万部

愚直なまでに映画愛を吐露し続ける木根さん。その姿を描くことで、押しつけがましくない“映画紹介マンガ”に仕上がり、読者の裾野の広がりにもつながった。2月に最新の第3巻が刊行され、累計発行部数は15万部に達した。

映画への愛がほとばしるこれらの作品とは趣が異なるのが、昨年12月刊行の「私と彼女のお泊まり映画」(新潮社)だ。女子大生2人がゆったりと鑑賞後の感想を語り合う展開で、著者の安田剛助氏は「様々な映画を題材にしたいと思い、好みが固まる前の多感な年ごろに設定した」という。

映画を頻繁に見ない人にも興味を持ってもらえるよう、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「ドーン・オブ・ザ・デッド」など新旧の有名作を取り上げた。「登場人物が感想を言い合う場面では、自分の意見を押しつけないよう配慮した。この本が映画との出合いの懸け橋になればうれしい」と安田氏は話す。

こうしたマンガが人気を博すのは、映画を見る方法が変わったことも背景にありそうだ。定額制の動画配信サービスが広まり、自宅で手軽に映画を楽しめるようになった。だが、膨大な作品の中から見てみたい映画を探すのは大変で、マンガは格好の案内役だ。作中で紹介された作品のDVDとマンガを並べて販促に生かすレンタル店もあり、「映画選びの一助になれば」とKADOKAWAの担当編集者は話している。

(文化部 近藤佳宜)

[日本経済新聞夕刊2017年3月21日付]

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