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ニッキィの大疑問

店の営業時間、なぜ短縮? 需要に変化、人手不足も重荷

2017/3/13付 日本経済新聞 夕刊

ファミリーレストランや百貨店など、「24時間営業」を見直す動きが広がっている

 飲食店や小売店で営業時間を短縮する例が増えているようね。24時間営業するお店は年々増えていたような印象があるけれど、なぜいま営業時間を短くするのかな。

 営業時間の短縮の動きについて、長谷川由布子さん(44)と伊藤利花さん(53)が田中陽編集委員に聞いた。

 「24時間営業」を見直す企業が増えているそうですね。

 「ファミリーレストランのロイヤルホストは今年1月、24時間営業を完全にやめました。『ガスト』や『ジョナサン』などのファミレスを手掛けるすかいらーくは24時間営業の店舗を大幅に減らして原則、深夜2時に閉店します。日本マクドナルドも24時間営業の店舗を減らしています」

 「営業時間を短縮しているのは外食産業だけではありません。大手スーパーでも24時間営業を見直す動きが広がっています。24時間営業のスーパー店舗数は1990年代後半以降、増加が続いていましたが、2014年の統計では07年に比べて減少しました。ファッションビルを運営するルミネは稼ぎ頭の新宿店(東京)を含む約8割の店舗で閉店時間を30分早めます。宅配便大手のヤマト運輸は正午から午後2時までの時間帯指定の配達中止など、配達時間の短縮を検討し始めています」

 休業日を増やす例もあるようですね。

 「三越伊勢丹ホールディングスは15年まで、正月は元日のみ営業を休み、1月2日に初売りをしていましたが、昨年から一部の店舗を除いて初売りを1日遅らせ1月3日としました。今年は1月2日に休む店舗を増やしました。今後はさらに1月3日も休業することや、2月と8月のみ設けている定休日を増やすことも検討しています」

 なぜ営業時間を短縮したり休業日を増やしたりするのですか。

 「一つは、消費者の行動の変化があります。これまで小売業や外食産業、サービス業は20世紀型のビジネスモデルの延長で、営業時間を長くすることによって売り上げを増やそうとしてきましたが、そうしたビジネスモデルが通用しなくなっているのです」

 「少子高齢化の進展やインターネットの普及に伴って、夜中に店舗で買い物をしたり、ファミレスやファストフード店でたむろしたりする若者が減り、朝型の生活を送る高齢者が増えました。一方で24時間営業のコンビニエンスストアがコーヒーの販売に力を入れ、店内で飲食できるスペースを設ける店を増やしているほか、総菜の品ぞろえも充実させています。そのため、外食産業や食品スーパーが担ってきた需要の一部を取り込んでいる面もあります」

 「もう一つ見逃せないのが、働く人たちの労働環境を改善しようという働き方改革です。人手不足で従業員を十分に確保するのが難しくなっている一方で、長時間労働に対する風当たりは強くなっています。人材を確保するためにも労働環境の改善が欠かせません。そこで営業時間を短くしたり休業日を増やしたりして、従業員満足度を高めようとしています」

 こうした動きは今後も広がりますか。

 「検討する企業が増えることは間違いありません。ただし、コンビニ業界だけは石にかじりついてでも24時間営業を続けようとするでしょう」

 「十数年前、一部の大手コンビニチェーンが実験的に一部店舗で24時間営業をやめたところ、売り上げが激減してすぐに24時間営業に戻したことがあります。四十数年前のコンビニ創業の頃は24時間営業は多くなかったのですが、地方で24時間営業をしたところ、昼間の売上高も大幅に伸びました。いつでもあいている安心感が顧客をひき付けているのです。また来店客が少ない深夜の時間帯に品ぞろえの補充や清掃などをすることで効率経営しています。コンビニが社会的なインフラになったことも大きいでしょう」

 「企業側の動きとともに、私たち生活者も、本当に年中無休で24時間営業が必要なのか、便利になりすぎた今の日本の暮らしを考え直すときに来ているかもしれません」

■ちょっとウンチク
終夜営業、規制撤廃で拡大
 日本における24時間営業の代表格はコンビニエンスストアと思われがちだが先駆者は飲食店だった。1952年(昭和27年)に牛丼店の吉野家が築地店で開始。その後、ファミリーレストランが70年代に追随した。スーパーなど大型店が終夜営業を90年代後半までしなかったのは、大規模小売店舗法という規制があったからだ。同法は閉店時刻、年間休業日数にも規制をかけ長く終夜営業を認めなかった。
 2000年に同法が廃止され大規模小売店舗立地法に変わったことで終夜営業は広がった。しかしすでに深夜の市場をコンビニが固めたことで大型店で終夜営業が軌道に乗っている店舗や地域は限定される。人手不足も重なり終夜営業見直しは当然の帰結でもある。
(編集委員 田中陽)
■今回のニッキィ
長谷川 由布子さん 生保勤務。最近、キャリア推進セミナーによく通っている。「自分が何をするのかは自分でしか決められないということを改めて認識するようになりました」
伊藤 利花さん 出版社勤務。4年ほど前からランニングを始めた。「3年前からフルマラソンの大会にも出始め、米ラスベガスでも2度、マラソン大会に出場しました」

[日本経済新聞夕刊2017年3月13日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は4月3日の予定です。

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