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食べるアートだ ネオ和菓子10選

NIKKEIプラス1

2017/3/4付 NIKKEI プラス1

スタイリッシュで独創的。イメージを一新する和菓子が増えている。
新世代の職人が、伝統の技法を生かしつつ、時代にあった和菓子を創り出す。
春は旅立ちの季節。贈り物にアートのような「ネオ和菓子」はいかが。

■和洋の区別、もはや意味ない

 原点回帰。上位に入った菓子を作る職人たちは口をそろえる。そもそも和菓子とは、明治時代に海外から持ち込まれた西洋菓子と区別して使うようになった呼び名だ。

 日本の菓子の歴史をたどると、源流は「果子」と呼ばれた木の実や果物に行き着く。中国からは遣唐使を通じて新しい菓子が伝わり、ポルトガルからはキリスト教と一緒に「南蛮菓子」がやってきた。日本の菓子は海外からの影響を受けて進化を続けてきた。

 これは和菓子じゃない――。和菓子という言葉が生まれると、和洋の区別が語られるようになった。カラフルなマカロンも伝統的などら焼きも「おいしい」と感じ、和食にワインを合わせるライフスタイルが定着したいま、こうした区別は意味をなさない。

 四季や自然を表現する和菓子の文化や製法を大切に引き継ぎながらも、素材の和洋を問わず、目にも楽しめるおいしいお菓子で楽しいひとときを。新しい菓子を生み出す作り手たちの思いは共通している。

 今回専門家に選んでもらった「ネオ和菓子」は、素材の組み合わせや食感、ビジュアルが高い評価を集めた。日本の菓子の進化は止まらない。

1位 ドライフルーツの羊羹(wagashi asobi) 780ポイント
イチジク切り口 まるで絵画

 大手和菓子店で経験を積んだ稲葉基大さんと浅野理生さんが、自由な発想の和菓子を目指して2011年、東京都大田区で開業した。扱うのはほかに「ハーブのらくがん」のみ。「1人1品に特化する製造、販売法も新しい」(平岩理緒さん)。現在は4人で活動中。

 北海道産の小豆を使ったあんと沖縄県西表島産の黒糖、ラム酒を練り合わせ、ラム酒に漬けたドライフルーツのイチジクやイチゴ、クルミなどを盛り込んだ。「味の完成度が高い」(君島佐和子さん)。羊羹(ようかん)は舌触りがなめらかで「上品で味わい深い」(里井真由美さん)。粒々した食感も楽しい。

 パンに合わせる和菓子をと依頼され浅野さんが考案した。「クリームチーズやマスカルポーネと相性がいい」という。ワインやシャンパンとも合い「和菓子の新しい楽しみ方ができる」(原亜樹子さん)。1センチほどの厚さに切るとイチジクの形が現れ「切り口が面白い」(中村肇さん)。

 (1)内容量 400グラム(2)価格 2160円(3)http://wagashi-asobi.com/

2位 ひと口果子(HIGASHIYA) 610ポイント
棗、クルミ、ココア… 変わり種のハーモニー

 日本の伝統美を追究するデザイナーの緒方慎一郎さんが手掛ける東京・銀座の和菓子店。日々の菓子屋から名付けた。菓子6種の詰め合わせで、巻物のような和紙の箱に入り「従来の菓子の形や大きさが一新されるようなスタイル」(梶山浩司さん)だ。

 発酵バターを優しい甘さのナツメヤシで挟み、ローストしたクルミを載せた「棗(なつめ)バター」、クルミ入りのあんにココアをまぶした「桧枝(ひわだ)」など「素材の組み合わせが面白い」(西尾智司さん)。中身の違う2セットがあり、今回はAセットで評価した。店舗では菓子に合う茶やアルコールを提案する。

 (1)6個(2)1944円(3)http://www.higashiya.com/

3位 みずのいろ(つちや) 550ポイント
5色の水滴 四季の「美」映す

 真っ白い箱を開けると、5色の薄いようかんが立っている。地下水が豊富な岐阜県大垣市の土地にちなみ、空の色や山の木々、イチョウやもみじなど四季を映して水の色が変わる様子を9代目の槌谷祐哉さんが表現した。色づけにはスペアミントなどハーブを使う。「軽快で気持ちを浮き立たせ、伝統菓子の趣もあって和洋を超えている」(君島さん)

 寒天と砂糖を煮詰めたようかん液を平板に流して1枚ずつ手作りする。「型抜きせず、不定型な水を表現している」(畑主税さん)。「極薄でシャリッとした表面と中のしっとり感との対比が繊細」(平岩さん)。

 (1)10枚(2)1080円(3)http://www.kakiyokan.com/、10日前に要予約、店頭受け取りのみ

4位 玉響(乃し梅本舗佐藤屋)
梅とチョコ、運命の出会い

 完熟梅を使った山形の代表銘菓、乃(の)し梅を、生チョコのようなようかんに載せた。「乃し梅がこうなるのか、と驚く」(中島久枝さん)。創業190年を超える老舗の8代目が仕上げた。濃厚なチョコに白あんと寒天を合わせ、後味はさっぱり。「日本酒やブランデーとも合い、のし梅の楽しみ方の幅が広がる」(平岩さん)。

 (1)6個(2)1080円(3)http://satoya-matsubei.com/


5位 木.林(薄氷本舗五郎丸屋)
カリッ、フワッと口溶けよく

 積み木のようだが「カリッ、フワッと口溶けのよい干菓子」(芹沢賢次さん)。卵白と寒天などをムース状にして切り、自然乾燥させた。レモン、和三盆、ココアなど5種類の味。水田に張る氷をイメージした干菓子「薄氷」で知られる富山県小矢部市の老舗で、16代目が考案した「土地や店の記憶を残した新しい菓子」(中島さん)だ。

 (1)15本(2)648円(3)http://www.usugori.co.jp/


6位 オリーブ大福(たねや)
オイルかけて華やかに、ぱくっ

 塩を利かせた大福に、イタリア産オリーブオイルをかける。滋賀県近江八幡市の老舗が手掛け、「ありそうでない味わいにびっくり」(里井さん)。「餅やあんの香りに華やかさが加わる」(原さん)。オイルは1本9グラム入りで、別売(9本、1944円)もある。「おいしくて意外性もあり、スタイリッシュ」(米村昌泰さん)。

 (1)6個(2)972円(3)https://taneya.jp/home/


7位 ミント煎餅(田中屋せんべい総本家)
爽やかさが止まらない

 ひとくちサイズでパリパリ食感の口溶けのよい煎餅。岐阜県大垣市の老舗の6代目が刻んだミント茶葉を生地に練り込んだ。「煎餅の香ばしさに負けないミントの香り。素材同士が高め合っている」(原さん)。「従来にないサイズで斬新」(中村さん)だ。女性の人気が高く「くせになるおいしさ」(畑さん)。

 (1)45グラム(2)324円(3)http://shop.tanakaya-senbei.jp/


8位 あんペースト(こしあん)(トラヤカフェ)
パンやヨーグルトに合わせて

 銅釜で炊き、黒糖とメープルシロップを加え手練りしたなめらかなこしあん。室町時代創業の虎屋が東京で展開するトラヤカフェの代表格。コクがあって口溶けがよく、「あんになじみのない人でも気軽に楽しめる」(原さん)。湯で溶かすと上品な即席のお汁粉に。カフェオレやヨーグルトなど乳製品との相性がいい。

 (1)290グラム(2)1080円(3)https://www.toraya-group.co.jp/toraya-cafe/


9位 鴻池花火(五條堂)
お口に広がるカラフル花火

 東大阪市の鴻池新田一帯には花火大会がないといい、カラフルな花火で楽しんでほしいと2代目が考案した。ブルーベリーやパイナップルなど5種の果物と生クリーム、こしあんを手包みしたフルーツ大福。「果物をびっしり詰めた大胆さに驚く」(芹沢さん)。コーヒーや紅茶に合う。「和菓子とケーキの間ぐらい」(米村さん)。

 (1)1個(2)360円(3)http://gojodosweets.com/、店頭販売のみ


10位 淡雪花(藤い屋)
「もみじ」の老舗がレモンで雪菓子

 広島のもみじまんじゅうの老舗。広島産レモンを主役に据えた菓子をと、レモン果汁と皮を使ったギモーブにレモンの寒天を挟み込んだ。フワッ、モチッとした「意外性のある食感とレモンのさわやかさが秀逸」(里井さん)。信州の伝統食「氷餅」を散らし、シャリッとした食感の雪を演出した。「感動の出合いは忘れられない」(畑さん)。

 (1)4個(2)800円(3)https://www.fujiiya.co.jp/


◇     ◇

 ランキングの見方 数字は選者の評価を点数にした。商品名、店名。(1)内容量(2)税込み価格(送料別)(3)店の情報など。スタイリング・西崎弥沙

 調査の方法 和菓子に詳しい編集者らに「和菓子職人が伝統的な手法や食材を生かして生み出した新世代の和菓子」をあげてもらい、24品を選出。専門家が試食し「スタイリッシュ」「意外性がある」「世界に発信したい」などの観点から順位を付け、編集部で集計した。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。

 梶山浩司(東京製菓学校校長)▽君島佐和子(「料理通信」編集長)▽里井真由美(フードジャーナリスト)▽芹沢賢次(製菓実験社和菓子編集部)▽米村昌泰(レストランよねむらオーナーシェフ)▽中島久枝(「日乃出が走る―浜風屋菓子話」著者)▽中村肇(「和菓子」著者/デザイナー)▽西尾智司(全国菓子研究団体連合会会長/本松葉屋会長)▽畑主税(高島屋和菓子バイヤー)▽原亜樹子(菓子文化研究家)▽平岩理緒(「幸せのケーキ共和国」主宰)

[NIKKEIプラス1 2017年3月4日付]

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