葉酸摂取、正しい理解で 胎児の障害減らす効果取りすぎは発熱など招く

緑黄色野菜などに含まれるビタミンの一種、葉酸。胎児の先天性障害を減らす効果があり、医師らは妊娠する可能性のある若い女性に積極的な摂取を呼びかける。海外では食品への添加を義務付ける国も多く、日本でもパンなどで「葉酸入り」が増えてきた。生活習慣病の予防にもつながるとされる一方で、過剰摂取は発熱などを招く可能性もある。女性に限らず、正しく理解しておきたい。

葉酸を添加した牛乳やパンなども市販されている

「葉酸を適切に摂取すれば、毎年数百人の子供が障害を持たずに生まれることができる」。葉酸普及研究会代表の近藤厚生・熱田リハビリテーション病院副院長はこう訴える。

葉酸は1940年代にホウレンソウから発見されたビタミンB群の一種だ。細胞増殖や臓器形成に不可欠で、特に妊娠初期に不足すると胎児の神経組織が正常に発達しないことがある。「無脳症」や脊髄が皮膚の外に飛び出す「二分脊椎」などの神経管閉鎖障害の子供が生まれやすくなる。

日本産婦人科医会の調査によると、日本では分娩1万件当たりの同障害の患者数は年5~7人で、約30年間、横ばい傾向が続く。超音波検査などで出生前に病気が判明し、妊娠中絶するケースもあり、実際の患者はさらに多いとみられる。

米国では98年、穀物などへの葉酸の添加を事実上義務付け、同障害の患者が減少。国際団体「食糧栄養強化イニシアチブ(FFI)」によると、昨年までに世界86カ国で食品への葉酸添加政策が行われ、患者が30~50%減少したという。

厚生省(当時)は2000年、妊娠可能な年齢の女性に葉酸摂取を促すよう都道府県に通知した。特に妊娠を計画しているときは食品からだけでなく、栄養補助食品(サプリメント)などで1日400マイクロ(マイクロは100万分の1)グラムを摂取するよう推奨。母子手帳にも02年、「葉酸の摂取が重要」との記載が加わった。

葉酸は妊娠前から十分に摂取することが望ましい。近藤副院長は「やせ願望を背景に、偏った食生活で葉酸不足に陥っている女性は少なくない。妊娠が分かって母子手帳をもらってから取り組んでも遅い場合もあり、海外のように食品への添加を進めるべきだ」と指摘する。

近藤副院長は15年8月、医師や栄養士ら有志のグループで日本パン工業会など加工食品業界6団体に製品に添加するよう要望書を提出。その後、大手パンメーカーが一部製品で添加を始めた。シリアルや牛乳などでもそうした品が増加傾向にあるという。

若い女性だけでなく、住民に広く摂取を呼びかける自治体もある。埼玉県坂戸市は2006年度から地元の女子栄養大と共同で「葉酸プロジェクト」を始めた。葉酸には動脈硬化や脳梗塞などの生活習慣病、認知症を予防する効果もあるとされ、「子供から高齢者まで、すべての人に必要な栄養素として啓発している」(同市立市民健康センターの担当者)という。

食品中の葉酸をどれだけ吸収できるかには個人差がある。同市が開くセミナーでは遺伝子検査で体質を調べ、結果に応じ栄養指導を徹底する。緑黄色野菜など葉酸を含む食品を積極的に食べるように促すほか、「体質的に食品だけで十分な葉酸がとれない場合は、葉酸添加食品やサプリメントを補助的に利用することも検討してもらう」という。

葉酸を多く含むメニューを提供する市内の飲食店46店を「健康づくり応援店」に認定するなど普及啓発に取り組んだ結果、市民アンケートで葉酸の認知率は約8割に達したという。

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サプリの活用 効果的 過剰摂取で発熱・かゆみも

葉酸はホウレンソウやブロッコリーなどの緑黄色野菜、レバーなどに多く含まれるが、食品中の葉酸は体内で約50%しか利用されない。一方、栄養補助食品(サプリメント)に使われる化学合成された葉酸は利用効率が約85%になる。

厚生労働省の食事摂取基準(2015年版)では、18歳以上の葉酸摂取の推奨量を1日240マイクログラムと設定。妊婦の場合は2倍の同480マイクログラムに増える。

同省研究班が妊婦を対象に食事からの葉酸摂取量を調べた結果、1日300マイクログラム前後にとどまった。食事だけでは十分に取り入れるのは困難なケースも多いとみられ、研究班の報告書はサプリメントなどの活用も有効としている。

一方で葉酸を過剰摂取すると発熱やかゆみなどの症状を起こす恐れもある。

このため食事摂取基準ではサプリメントなどでの摂取量について、成人で1日900~1000マイクログラムを上限に設定している。

(倉辺洋介)

[日本経済新聞夕刊2017年3月2日付]

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