駒姫 武内涼著囚われの美女を救えるか

(新潮社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

私はこの一巻の刊行をどれだけ待ち望んでいたことか。昨年、作者の『吉野太平記』を読んで以来、その端倪(たんげい)すべからぬ力量に魅せられ、新作はまだか、と首を長くして待っていたのだ。

物語はシンプルである。文禄4年の夏、“東国一の美女”と謳(うた)われた最上義光の娘・駒姫は、豊臣秀次の側室となるべく聚楽第入りする。が、秀次は猜疑心(さいぎしん)の塊となった秀吉のため、謀叛(むほん)の濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を着せられ高野山で切腹。囚(とら)われの身となった駒姫たちにも兇刃(きょうじん)が迫る。最上の男たちは娘を救えるのか。徹底的に刈り込んだ文体によって描かれる権力の恐ろしさ、人間の強さと弱さ。そしてページを繰る毎(ごと)にゆるむ涙腺――。

これからの斯界(しかい)を背負うホープの力作である。

★★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2017年3月2日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

駒姫: 三条河原異聞

著者 : 武内 涼
出版 : 新潮社
価格 : 1,944円 (税込み)