くらし&ハウス

暮らしの知恵

省エネ改修、1部屋から 東京都が助成制度

2017/3/1付 日本経済新聞 夕刊

 断熱性が高く、燃料電池や蓄電池などを備えた「エコハウス」の普及を目指し、東京都が来年度から新たな助成制度を始める。ポイントは、1部屋だけの断熱窓の改修でも助成すること。1戸全体を対象とする国の制度より使いやすくなる。先進的な制度の効果と課題を追った。

住宅展示場ではエコハウスの助成制度などを解説するセミナーが盛況だ(東京都新宿区)

 2月中旬の日曜午後、東京都庁に近い「東京都新宿住宅展示場」(東京・新宿)を訪れた会社員のAさん(52)は、エコハウスに関するセミナーをメモを取りながら熱心に聞いていた。「省エネ性能が高い住宅を建てる参考にしたい」と話すAさんは、すでに都内に約80平方メートルの土地を購入済み。国からの補助金や贈与税の非課税措置、東京都の助成制度があることが、エコ住宅にこだわる動機の一つだ。

 東京都は家庭のエネルギー消費量の削減を目指し、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用した「エコハウス」の普及に力を入れる。窓を断熱性の高いものにし、太陽光発電装置や燃料電池、蓄電池を併用する。

 来年度から、エコハウスの建設を促すため新たな助成制度を始める。既存住宅への「高断熱窓」の導入を促すため、来年度予算案で25億円を新規計上。ポイントは1部屋分の改修でも助成する(上限50万円)点だ。国も高断熱窓に助成するが対象は1戸全体の改修に限られる。都の新宿住宅展示場では週末、エコハウスの助成制度のセミナーが実施される。

 「まずは1部屋だけでも断熱性を高めて省エネ仕様にすれば、低予算でエコハウスの快適さを実感できる」。こう指摘するのは、セミナー講師を務めるGreen Bridge(東京・中央)の荒木康史社長だ。省エネを重視する施主が増えているものの、実際、省エネ住宅を実現するためのノウハウは知られていない。1戸丸ごとではハードルが高く、高齢者はあきらめがちという。「都の1部屋でも対象にする助成は、エコハウス普及の呼び水になる」(荒木氏)

◇     ◇

 自宅の寝室の2つの窓を高断熱窓に改修した都の倉田京弥・地域エネルギー課長によると「体感温度で2~3度違う。冬でも12度を下回らず、暖房もほぼ使わなくなった」。1部屋に高断熱窓を導入するだけで、住まい全体のエネルギー効率が4%高まるとされる。

 また、部屋単位のエコハウス改修であれば、居住しながら対応でき、仮住まいを確保する必要はない。都内では住宅の約7割がマンションのため、“部屋単位”のエコハウス化が各世帯での省エネへの近道とみる。

エコハウスの外壁には手前からエネファーム(燃料電池)、蓄電池が並ぶ(東京都日野市)

 昨年8月に就任した小池百合子都知事は、都の政策の柱の一つとして環境先進都市を目指す「スマートシティ」を掲げる。小池氏自身もエコハウス仕様の自宅で暮らす。環境政策を担当する都幹部のBさんも3年前に、太陽光発電装置、燃料電池、蓄電池を併用したエコハウスを新築した。

 通常時は燃料電池と(併用して)太陽光で作る電気を蓄電池にため、昼間は売電可能な太陽光の余剰電力を多く生み出せる。停電の際も蓄電池がバックアップし、燃料電池の連続運転が可能になる。

 3電池の設置費用は約550万円だが、国と都、地元自治体の助成制度を活用することで、3割に当たる約170万円を補助金で賄うことができたという。ただ自宅で使った分を除いた電気を電力会社が買い取る際の価格が、燃料電池を導入する家庭の場合は割安になるため、Bさんは「省エネ設備の初期投資分の全てを回収するには、かなり時間がかかる」と話す。

◇     ◇

 小池知事は昨年末に、2020年までの中期計画として約500項目の政策目標を提示した。エコハウスの普及に向けては「家庭用燃料電池の普及台数15万台」を目指すが、16年度末では3万台にとどまる。都は動画共有サイト「ユーチューブ」を使ってエコハウスの効用を紹介する動画を配信するなど広報戦略にも躍起だが、補助金頼りの誘導策には限界もありそうだ。

 そもそもエネルギー効率を何%改善すれば「エコハウス」と呼ぶかについて、都は明確な基準を設けていない。このため来年度中に都内の省エネ住宅を対象に実態調査を行い、都が目指すエコハウスのモデルを提示する。

 高断熱を対象とした都の新たな助成制度を活用して“エコ寝室”や“エコリビング”を体験した住民が、さらに3電池を備える本格的なエコハウスへの改修に踏み出せるようにすることが次の課題となる。実際にエコハウスに住む知事や職員の制度設計に関心が集まっている。

◇     ◇

■窓の断熱化を促す
 東京都は既存住宅の窓の断熱改修費の6分の1(上限50万円)を助成する事業を来年度から始める。国にも改修費を3分の1(上限150万円)助成する制度があるが、対象は1戸全体の工事に限られる。併用すれば工事費は半額になる。

(地方部 飯塚遼)

[日本経済新聞夕刊2017年3月1日付]

くらし&ハウス

ALL CHANNEL