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横須賀、スイングの街再び 往時目指しジャズフェス

司法書士、長坂利広

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NIKKEI STYLE

神奈川県横須賀市はジャズの街だった。戦後、進駐米軍の拠点となりアメリカ文化が流入。戦中は敵国音楽として禁止されていたジャズの音色やリズムが、街中の至るところで鳴り響いた。市内には生演奏を聴かせる店が100軒以上も立ち並び、頂点として1000人以上を収容する規模のホールを持ち「東洋一」と称された米駐留軍のEMクラブがあった。

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消えゆくシンボル

だが隆盛の時代はやがて過ぎ去ってゆく。店は消え、1990年にはシンボルのEMクラブが解体。ジャズの街と呼べなくなり、記憶さえも地元から薄れていった。

その現状を私は憂えた。歴史を後世に伝えようと、往時の関係者から話を聞くなど証言の掘り起こしに注力。2016年には一般社団法人「ヨコスカ ジャズ協会」を設立し、音楽イベントを開くようになった。横須賀にジャズの灯を再びともそうと活動している。

私が横須賀市に来たのは05年、39歳の頃。司法書士試験に合格し、実務を学ぶ研修の配属先として移り住んだ。20歳前後からジャズを愛聴してきた私は胸が弾んでいた。横須賀は有名なジャズの街だ、エモーショナルな音が街中で聴けるはず――。だが、鳴っていない……。方々を訪ね、LPを聴かせる店やライブハウスを3軒ほど見つけたが、私の思い描いた風景とは遠く離れていた。

ショックを受けると共に背筋が冷える思いもした。「ジャズの街だった歴史が、このままでは完全に消えてしまう」。私は往時をもっと知りたくなった。関連の文献を読んだり、当時を知るミュージシャンや観客に話を聞きにいったり。見えてきたのは、想像を超える華やかさだった。

45年9月、市内にあった旧海軍兵員宿舎が米兵向けクラブの国内第1号となり、ジャズ演奏が行われた。ここを起点に、横須賀はジャズの街として栄えていく。米軍横須賀基地前の通称「どぶ板通り」を中心とした1キロメートルのかいわいは、ジャズのクラブが所狭しと立ち並んだ。当時を知る人は「すごいネオンで、銀座も上回る人通りだった。日本でもトップのにぎわいだったのでは」と口をそろえて言った。

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有名奏者もこぞって

街の繁盛ぶりが日本中の音楽家を引きつけた。復員した旧陸海軍の軍楽隊員のほか、秋吉敏子さんに渡辺貞夫さん、ジョージ川口さんら有名なミュージシャンも若い頃、こぞって横須賀に集って演奏している。なかでも特別な場所だったのがEMクラブだった。

舞台に出演した元ミュージシャンは「給料は高額で、数日演奏すれば1カ月は遊んで暮らせた」と振り返る。もちろん金だけが引力を持ったのではない。その人は続けて言った。「1000人の外国人が盛り上がる姿、高揚して演奏する人間の姿、これが本物なんだと感じた。それは、横須賀でしか味わえなかった」

同クラブを愛したサックス奏者の原信夫さんも「どの劇場の依頼を断ってでも、EMクラブに出たかった。楽譜に縛られるのは面白くない、スイングしなければジャズじゃないと教わったよ」と懐かしそうに語ってくれた。ここでしか体感できない「本物」のジャズがあったから、横須賀は随一の輝きを放ったのだろう。輝きは60年代半ばまでがピークだった。

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2日間で1万人以上

私は昨年1月、横須賀ジャズの再興を目指して地元の音楽関係者や経営者ら70人とヨコスカ ジャズ協会を立ち上げた。代表理事に就任し、「EMクラブ レジェンド」と題したライブなどを定期的に実施したほか、同9月には街中をジャズであふれさせる一大フェス「ヨコスカ トモダチ JAZZ 2016」を開催。プロとアマの総勢約400人が劇場やライブハウス、カフェバー、ストリートなど街のいろいろな場所で、2日間にわたり音楽を響かせた。

開催前は「ジャズで人は集まらない。規模を縮小しよう」と協会内でも懸念の声が強かった。だが蓋を開けて驚いた。何と延べ約1万2000人もの人が来てくれた。「どぶ板でジャズがまた聴けるのはうれしい」と語る高齢の方もいたし、若い人も「何だか面白そう」と足を運んでくれた。私は「横須賀ジャズの灯は消えない。ここから、また始めるんだ」と感動して泣きそうだった。

今年も「トモダチ JAZZ」をはじめ、様々な音楽イベントを予定している。歴史を伝えるため、関係者のトークショーなども積極的に行うつもりだ。写真や楽譜の当時の資料を体系的に見せる常設展示の空間も確保したい。夢ばかりが広がっている。

(ながさか・としひろ=司法書士)

[日本経済新聞朝刊2017年3月1日付]

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