型破りアイドル、上野優華 個性光るバラードの女王
2013年にデビューした上野優華(19)は型破りなアイドルだ。伸びやかで力強い歌声は他の女性シンガーと比べても上質で「アイドルだから歌唱力はそれなり」という世間の観念の枠に収まらない。ライブでは時に歌よりMC(語り)が長くなるといった自由奔放なパフォーマンスで観客を魅了する。あまたのグループがしのぎを削るなかで個性が注目され、昨秋に初めて全国5会場でのツアーを行うなど人気を拡大している。
上野は徳島県出身。12年にキングレコードが主催したオーディションで、応募者約1万人のなかからグランプリに輝いた。所属するベルウッド・レコードのマネジャー、山村剛は「粗削りだけど、小さくまとまっていなかった。将来性に賭けた」と振り返る。
アイドルというとグループ全盛だが、潜在力を買われソロでデビュー。活動当初は「人見知りで自分を出せずにいた」(上野)というが、「やるしかない」と覚悟を決めると、進撃が始まった。
まずライブの光景が様変わりする。用意したMCを読むだけだった予定調和の公演から脱却。応援コールは観客が自然と起こすものだが、「コールしてくれないと歌わない」とステージで何度も駄々をこね、ライブを自ら盛り上げた。アドリブでMCをこなせるようになり、観客が食いつくと、思わずしゃべりすぎて終演の予定時間を1時間半もオーバーしたこともある。
そんな個性的なライブで人気は急上昇。観客動員が増えるなか、持ち前の歌の力にもスポットが当たる。15~16年、アイドルが出演権をかけライブ・パフォーマンスを競うテレビ番組で、しっとりとした曲を豊かな表現力で歌い上げて11週連続で勝ち抜いた。
「アイドル界のバラードの女王」と呼ばれるようになって注目はさらに集まる。昨夏に出したシングルはオリコンランキングで最高21位に食い込んだ。昨年、初のアルバムを発表したのに続き、今年1月にもミニアルバムを発売。今まさに飛躍の時を迎えようとしている。
女優、声優としても活動の幅を広げる。ホラー映画で狂気を帯びた女性の役を演じるなど、ここでも独自路線を進む。「どれだけ失敗してもいい。苦手なことも、いつか得意なことになると思うから。歌も芝居も挑戦し続けて、もっと成長したい」と上野は前だけを見ている。
(諸)
[日本経済新聞夕刊2017年2月22日付]
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