汚染訴訟(上・下) ジョン・グリシャム著
米社会の光と影を切り取る
大手の法律事務所を解雇された女性弁護士。次に得た職場は無給の法律扶助協会だった。ニューヨークからはるか遠方にも思えるアパラチア炭田地帯。そこで彼女は最底辺層の「辺土」を見る。企業公害、家庭内暴力、親子の断絶などなど。
そして、石炭資本による濫(らん)開発を告発する一匹狼(おおかみ)の弁護士が登場。グリシャムお馴染(なじ)みの展開と思わせて……。今回は、後半、予測をこえたスピンをみせる。「負け組」に寄り添う女性法律チームが鮮やかだ。「巨悪に挑む正義漢」は脇役にまわる。作者は、逆転満塁ホームランの派手な結末をあえて避けた。
サブプライム・ローン破綻後のアメリカ社会の光と影を陰影深く切り取ってみせた秀作。
★★★★
(評論家 野崎六助)
[日本経済新聞夕刊2017年2月16日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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