ネオ土間、集合住宅にも 収納や趣味、多彩に活用

家の改修によってモダンな土間を取り入れるケースが、戸建てのみならず集合住宅でも増えている。玄関近くにあり、外と内の境という土間の特徴を生かし、収納や趣味の場にと使い方も自由で多彩。かつての土間とは一味違う「ネオ土間」を住まいに採り入れるコツを教えてもらった。

モルタル仕上げの土間がある佐藤さん宅(横浜市)

「長男(10)、次男(8)が『ただいま』と駆けこんできて、かばんを放り込んだら、スケートボードをつかんでそのまま遊びに出かけることもしょっちゅう」と笑うのは横浜市の佐藤萌さん(33)。子供たちが時に靴も脱がずに出入りするのは玄関から延びるモルタルの土間だ。

室内ではあるがここは半分屋外扱い。靴に傘、キャンプやペット用品など外で使うものがすぐ手に取れるよう棚を両側の壁に設置した。汚れや水気があって部屋に持ち込むには気が引けるものも気にならない。

掃除もほうきで掃くだけと簡単だ。「帰ってすぐに、荷物を一旦置ける場所があると本当に便利。泥付き野菜の保存にも重宝」と佐藤さんは土間の使い勝手の良さに太鼓判を押す。

2012年に築30年超の中古団地の一室を購入、全面リノベーションの際に土間をしつらえた。デザインは佐藤さん自身の発案だ。元の部屋を解体し間取りを変更、新たに壁を作り収納棚を備え床をモルタルにして8平方メートルほどの土間が誕生した。改修を手掛けたトラスト(横浜市)によると、状況によるが佐藤さん宅ほどの土間改修は30万円からが目安とのこと。間取り変更などの改修はせず、元からある土間をモルタル仕上げにする工事だけなら10平方メートル程度以下では4万円からが目安になる。

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「土間があると空間に抜け感が出る」とは同社の矢嶌崇人さん。玄関は家の顔、ドアを開けてすぐの場所だけに暗かったり狭くて散らかっていたりすると室内の印象まで左右してしまう。土間があると、広がりやゆとりを醸し出すという。

佐藤さん宅のようなモルタル土間はモダンな印象が受けている。モルタルの厚みや塗る時のこてムラなどによって独特の質感も生み出せる。半面、タイルや石などに比べて汚れやすい、下地が乾燥すると収縮しひび割れが起こりやすいのも特徴だ。「ひびや汚れも味のうち」と思えない人にはあまりお薦めできないという。

「半分外で半分内」の特徴はアウトドア系の趣味のスペースとしても最適だ。

土間に趣味の自転車が並ぶ金子さん宅(都内、写真=中村絵(C)LiVES)

東京都の金子倫之さん(36)宅は全面リノベーションしたマンションの1階。玄関ドアから奥のサッシまで続く14平方メートルのモルタルの通り土間には趣味の自転車がずらりと並ぶ。「置き場としてだけでなく整備やトレーニングもできるスペースが欲しかった」と金子さん。そこで改修を手掛けた一級建築士の石井大吾さんが提案したのが土間プランだ。

自転車を土間奥の窓外まで動かせば携帯シャワーで洗浄もできるし、スタンドに固定してトレーニングも可能。周りの棚には自転車用品やお気に入りの本が並び、「好きなものが詰まった空間ができて家に居るのが好きになった」(金子さん)。

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土間、しかも1階というと冷えそうだが、「冬は若干、寒いが土間にいる時は基本、体を動かしているので平気。じっと作業する時は着込めばいいし風がない分、外に比べれば楽なもの」と、気にする様子はない。

モルタルの土間に小上がりを設置=リズム提供

賃貸住宅でも土間を取り込んだ物件がある。リズム(東京・渋谷)が手掛けるワンルーム賃貸の「Doma」シリーズは、モルタル土間フロアに引き出し収納付きの畳敷き小上がりを設置した造りだ。09年に始め、現在17物件を都内で展開する。

同社の挽地裕介マーケティング部課長は「昔ながらの和の良さと今風の雰囲気をミックスしている。土間と小上がりで高さの違う生活空間が2つでき、今までなかったデザイン」と部屋の特徴を説明する。土間にラグを敷いてソファを置くことも、靴のまま暮らすこともでき、家賃は周囲の相場よりやや高めでもこだわりのある暮らしがしたい人に人気という。

魅力あるネオ土間だが、モルタルは防音性が低いため建物によっては規約で施工許可が下りない場合もあるので注意したい。石井さんは「土間にしたい場所の下が寝室の場合は難しい」と話している。

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■底冷え対策もしっかり
モルタルの土間は、冬期の底冷えは避けられない。対策としては床暖房や断熱材の設置があるが、床暖房は壊れた時に修理費がかさみがち。断熱材は床下の構造上、集合住宅では設置が難しいこともあるので設計・改修時に相談したい。

(ライター 村樫 裕理子)

[日本経済新聞夕刊2017年2月8日付]

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