都市のインフラ、大丈夫? 老朽化備え、予防保全が重要

2016年11月に陥没した福岡市博多区のはかた駅前通り
2016年11月に陥没した福岡市博多区のはかた駅前通り

福岡で道路の大規模な陥没が起きて大きなニュースになったわね。下水道などの老朽化も問題になっているようだけど、日本の都市インフラは大丈夫なの?

都市のインフラについて、宮崎和恵さん(57)と荒木清里香さん(42)が谷隆徳編集委員の話を聞いた。

昨年、福岡市で道路の大規模な陥没がありましたね。

「昨年11月、JR博多駅前で5車線の道路が陥没しました。幸い、死傷者は出ませんでしたが、周囲のビルも一時立ち入り禁止になりました。さらに、陥没地点の地下にあった電気やガス、水道、通信ケーブルなどのライフラインも被害を受け、銀行のオンラインシステムが一部使えなくなるなどの影響も出ました。地下鉄工事のトンネル掘削中の現場に水や土砂が流れ込み、地表付近の地盤が緩んだことが原因とみられています」

「福岡市の地下鉄工事では、それ以前にも複数の道路の陥没が起きていました。今年1月20日には大阪市内で下水管の設置工事中に市道が陥没し、縦横7メートルの空洞ができる事故もありました。これらは地下の工事に伴う事故ですが、下水管の劣化などが原因の道路陥没も全国で相次いでいます。2014年度だけでも、道路の陥没は全国で3300カ所も起きています」

決して珍しいことではないのですね。

「道路の老朽化については、12年12月に中央自動車道の笹子トンネル(山梨県)で天井板が崩落して多数の死者を出し、これをきっかけにトンネルや道路橋の老朽化に注目が集まりました。東京の首都高速道路では完成から50年以上たった路線が増え始め、実際に橋梁のコンクリートが剥落したり、鉄筋がさびたりしている場所も目立つようになっています。すでに一部の区間では道路を造り直す更新事業も始まっています」

「しかし全国的に見ると、財政的な制約などから補修工事や橋の架け替えがなかなか進まない事例も多いのが実情です。地方自治体が管理する道路橋のうち、通行止めになっていたり通行規制がされていたりするものが15年4月時点で全国に2300以上もありました」

「公共施設の老朽化も進んでいます。総務省が13年に実施した調査では、全国の自治体が撤去を希望している公共施設が1万2000件以上もありました。身近なものでは公園のブランコやシーソーなどの遊具、街路樹や道路標識なども老朽化が進み、通学路の標識が倒れて子どもがケガをする事故なども起きています」

大都市では地下深くに設置された都市インフラが多いですね。

「地価が高く土地の高度利用が進んでいる大都市では、地下空間も高度かつ多様に活用されています。私有地の地下にインフラを設ければ土地の所有者に補償する必要が出てくるので、都市インフラの多くは道路の地下に集中して設置され、どんどん地下深くまで利用されることになります。ここに様々なリスクが生じています」

「最近、問題になっているのが地下水の水位上昇です。高度経済成長期に地盤沈下を防ぐため地下水のくみ上げを規制した結果、東京都内では1970年からの40年間に地下水の水位が60メートル上昇した地点もあります。その結果、地下鉄の補修工事が必要になるケースも増えています」

「地下に埋設された上下水道の老朽化も大きな問題です。国内の下水管の長さは約46万キロと地球11周分もあります。古くなった下水管はコツコツと掘り返して交換していくしかありません」

都市インフラの老朽化にどう対応すべきですか。

「日ごろからしっかりと点検して、損傷が激しくなる前に修繕する『予防保全』が重要です。インフラの寿命をできるだけ延ばしたうえで計画的に更新していけば、費用も抑えることができます。すでに一部の自治体などでは予防保全に力を入れ始めていますが、まだ全国的に広がっているとはいえない状況です」

「国も自治体も新しいインフラを造ることには熱心ですが、維持管理はなおざりになりがちです。これからの公共事業は『造る』ことよりも『守る』ことに重点を置くべきでしょう。保守・点検のための人員や予算の確保が必要です。人口減少社会を迎えるなかで、本当に必要なインフラだけを選別して維持していくことも大切になります」

■ちょっとウンチク
住民自ら道路点検 広まる
自治体の人材や財源が限られるなかで、老朽化したインフラを住民参加で維持しようと、全国で「道守(みちもり)」活動が静かに広がっている。住民自らがボランティアで道路を点検し、異常を見つけた場合は行政に連絡し、補修する仕組みだ。スマートフォンやタブレット端末などで簡単に様々な不具合を記録しやすくなった点も道守活動を後押ししている。
特に九州で盛んで、長崎大学のように道守を育成し、点検に必要な知識をもつ住民を独自に認定する制度を設けているところもある。道守は昔から存在し、万葉集でも詠まれているという。
しっかりと維持補修して、今あるインフラの寿命を延ばすと同時に、時代に合わせて必要なインフラを見直す必要もある。最近、各地で古くなった歩道橋の撤去が相次ぐ。高齢者などからみれば階段の上り下りはかなりの負担になり、利用者が減っているためだ。歩行者の速度に合わせて青信号の時間を調整する機能がついた信号が増えれば、もっと安全に道路を渡れる。
(編集委員 谷隆徳)
■今回のニッキィ
宮崎 和恵さん 学習塾を経営。最近、漢方薬に興味を持っている。「寝ている間のこむら返りを漢方薬で解消できたのをきっかけに、いろいろ勉強しています」
荒木 清里香さん 主婦。小学校1年生の娘さんが自転車に補助輪無しで乗れるようになった。「家の近所を私と一緒に自転車で“探検”するのが日課になりました」

[日本経済新聞夕刊2017年2月6日付]

ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は2月20日の予定です。

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