海に向かう足あと 朽木祥著
レースへ挑むクルーの日々
ストーリーは知らずに読むのが良い。特に、ラスト50ページは紹介不可。そうすると、6人のヨットクルーやその周辺の人々を襲う驚き、いや驚きを飛び越えた戸惑い、もっと正確に言えば、足もとの地面が突然なくなったような不安と言うべきかもしれない。そういう感情を共有できるだろう。
外洋レースへの参加を決めて出発するまでのクルーの、さまざまな事情と日々を描く手つきがまず素晴らしい。リアルで、情感豊かで、いつまでも読んでいたい気分になる。だからこそ、ラスト50ページから始まるクライマックスに言葉を失うのだ。児童文学の世界で数々の賞を受賞してきた著者初の一般向け小説だが、忘れがたい作品だ。
★★★★
(文芸評論家 北上次郎)
[日本経済新聞夕刊2017年2月2日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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