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ランチの後に猛烈な睡魔に襲われ、不覚にも職場でうとうと。こんな経験のある人は多いだろう。だが、こうした眠気は、昼食のとり方次第である程度防ぐことが可能なようだ。眠気を防ぐランチ術を探った。

「そもそも午後の早い時間帯に眠くなるのは人間の自然な生理」。医師で佐藤桂子ヘルスプロモーション研究所(東京・中野)の左藤桂子所長はそう話す。

左藤さんによれば、人間には「サーカディアンリズム(概日リズム)」と呼ばれる24時間周期の体内時計が備わっており、午後1~3時の間は、ちょうど眠くなる時間帯なのだという。

とはいうものの「眠気は、ランチメニューの選び方や食べ方次第で、ある程度抑えることができる」と左藤さんは続ける。

血糖上昇防ぐ

食事と眠気の因果関係は完全に解明されているわけではないが、有力な説はある。最も有力なのは、食後の血糖値の乱高下が眠気の引き金になるという説だ。

通常、食事の直後は血液中のブドウ糖の量が増え、血糖値が上昇する。すると、膵臓(すいぞう)からホルモンの一種、インスリンが分泌され、血液中のブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込む。血糖値を正常域に戻すためのメカニズムだ。

この時、食事から摂取するブドウ糖の量が多いと、血糖値が急上昇。それに反応してインスリンも大量に分泌される。その結果、インスリンが効き過ぎて、今度は血糖値が急低下。体が一時的にブドウ糖不足の状態に陥る。

すると、脳の唯一の栄養源であるブドウ糖が脳に十分に行き渡らず、「頭がぼーっとしたり、眠くなったりすることがある」(左藤さん)。

北里大学北里研究所病院内のレストラン「つくし」で出されている低糖質のメニュー(東京都港区)

北里大学北里研究所病院内のレストラン「つくし」で出されている低糖質のメニュー(東京都港区)

逆に、摂取するブドウ糖の量がそれほど多くない場合は、血糖値の上昇は緩やか。インスリンの分泌量も相応になるため、血糖値の下がり方もゆっくり。結果、ブドウ糖不足の状態になりにくい。

北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟さんも「食後の血糖上昇が、脳内ホルモンの一種で覚醒作用のあるオレキシンの分泌を抑制し、その結果、眠気を誘発するとの仮説がある」と話し、血糖値の上昇と眠気との因果関係を示唆する。

こうした理由から、食後に眠くならないランチのとり方の第一のポイントは、ブドウ糖の基になる糖質の摂取を抑えることと、専門家は口をそろえる。

糖質とは、具体的には、ご飯や麺類、パンなど。お腹がすいているからといって、ご飯をおかわりしたり麺を大盛りにしたりするのは、職場に戻ってから眠気を催す原因になる。

白より色付き

しかし、同じ糖質でも、玄米や胚芽米、全粒粉のパンなど「精製度の低いものは、比較的、血糖値の上昇を抑えることができる」(左藤さん)。色で言うなら、「白いものより色付きのもの」(同)が基本だ。糖質を全くとらない極端な食事は、心身に負担となるので避けた方がよいと、専門家は注意を促す。

最近は、糖質制限メニューを出すレストランや糖質制限食を置くコンビニ店もある。糖質制限食は、もともとダイエットや糖尿病患者のためだが、昼食後の眠気防止にも役立つというわけだ。

糖質を控えめにする一方、ランチでしっかりとった方がよいのは肉、魚、大豆などのたんぱく質や食物繊維、ビタミンの豊富な野菜、そして脂質だ。もともと健康維持に欠かせない上、「いずれも食後の血糖値の上昇を抑える効果がある」(山田さん)。

果物はビタミン類を豊富に含み体にはよいが、糖質も多いので、眠気防止の観点からは要注意。デザート類も糖質の塊なので、ランチでは避けた方がよい。

次に重要なのは、食べる順序。具体的には、「まずサラダなど野菜をたっぷり食べて食物繊維を摂取し、次に肉や魚、最後にご飯や麺類を食べるとよい」(左藤さん)。ブドウ糖の吸収を抑え、血糖値の上昇を緩やかにする効果がある。

そして山田さんは「時間をかけてゆっくりと食べることが大切」とアドバイスする。血糖値の急激な上昇を防ぐのによいという。ランチは、同僚と会話しながら楽しく食べた方が、眠気対策にもよいというわけだ。

(ライター 猪瀬 聖)

[日本経済新聞夕刊2017年1月30日付]

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