さらば偏食 一人暮らしのコンビニ・外食利用術
小さな総菜、複数選ぶ
ひとり暮らしをする人にとって自炊は難しい。仕事が長引いて外食やコンビニで食事を済ませてしまう人も多いのではないだろうか。無意識に外食を続けると健康を害するリスクが高まるという指摘もある。外食でも適切に栄養を取るポイントが注目を集めている。
ひとり暮らしをする人は増え続け、厚生労働省によると単独世帯は2015年に1352万世帯にのぼった。4世帯に1世帯が単独世帯の計算だ。ひとり暮らしは健康を維持しにくい。実際、米国の12年の研究ではひとり暮らしの人は2人以上で暮らす人より心臓や血管の病気で亡くなる確率が高いという結果が出た。
ひとり暮らしで健康が維持しづらい理由の一つが食生活だ。ひとり暮らしだと外食が増えて栄養バランスが悪くなりやすい。外食が多くなる傾向はひとり暮らしの若者だけではなく、高齢者にも当てはまる。日本能率協会総合研究所によると、60~79歳のひとり暮らし世帯は20代独身の食生活と似て、できあいの弁当を食べる頻度が多く、購入率は20代独身よりも高かった。
6大栄養素といえば、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維だ。ひとり暮らしで外食が続くと炭水化物や脂質を多く取りすぎる傾向がある。たんぱく質やビタミン、ミネラルは不足しがちに、また塩分は過多になる。その結果、肥満や生活習慣病になりやすい。
毎日規則正しく手作りの料理を食べられれば良いが、ひとり暮らしには難しいのが実情だ。管理栄養士の浅野まみこさんは「外食でも自分にあった食べ物を選べば健康に過ごせる」と話す。
たとえばコンビニで食べ物を買う場合、お腹がすいているとつい大きな弁当類やカップラーメンを選びがちだ。大きな弁当ではなくサラダやチーズなど小さい総菜を複数買い、自分の定食をつくるのが健康的だ。まず飲み物から選ぶと、気持ちが落ち着いて大きな弁当類に手が伸びにくくなるという。それからサラダや総菜、肉か魚のおかず、最後におにぎりなど主食を選ぶと良い。意識してたんぱく質や食物繊維を多く含む商品を選ぶことで、栄養バランスを取り戻せる。
東京都大田区に住む大崎沙世さん(24)は昨年からひとり暮らしをはじめた。仕事が忙しく平日は終電で家に帰る。日々コンビニで食事をすませることが多い。「コンビニで何を食べたいか考えながら好きな物を選ぶと食べるのが楽しみになってくる」という。
レストランでもやり方は同じだ。牛丼屋で大盛りを頼むより、サラダを選んで品目を増やせば食物繊維を摂取できる。バランスが取れるだけでなく、食感や味わいを変えて食べた後の満足度も上がる。
何を食べるかを選ぶには商品にどんな栄養があるか考えるのがコツだ。たとえば野菜ジュースは抗酸化作用の働きがある脂肪分の消化を助けるβカロテンを多く含んでいる。酸化しやすい揚げ物と一緒に飲むとエイジングケア効果がある。しかし製造過程で水に溶けない食物繊維は取り除かれる。一部のビタミンも加熱で減少してしまう。ジュースを飲めば野菜を取ったことにはならないので注意が必要だ。
サラダなどの野菜はドレッシングなしで食べてみるのがおすすめだ。コンビニ商品の濃い味に慣れずに済むし、またよくかむことで食事の満足感を得られる。食事の中で一つ味のついていないものを加えると減塩の効果も大きい。
カロリーを減らしたり塩分を控えたりするのは健康に良いが、ひとり暮らしの生活環境では実現が難しい。ただ最近はコンビニでも「サラダチキン」など健康路線を打ち出した商品が増えている。日々の生活に少し足りない品目をプラスすれば、手作り料理を食べられなくても健康でいられる。
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自分にあう方法 実践を
健康を保つために自分の身体を管理する「カラダマネジメント」という言葉が関心を集めつつある。浅野さんが代表取締役を務めるエビータが商標登録している。食生活は仕事よりも管理が難しい。食欲や嗜好、体調、生活習慣など調整しづらい条件によって左右されるためだ。
できることを試しながら、自分にあった食事や運動の方法をみつけることで健康管理ができる。「日々の運動や手作りの食事など、身体に良いといわれていることができないと悲観する必要はない。自分にあった方法を実践するのが大切」と浅野さんは話す。
(矢崎日子)
[日本経済新聞夕刊2017年1月26日付]
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