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売れる営業 私の秘密

「ノースフェース」のエース 一度に140点購入させる ゴールドウイン 藤田大輔さん

2017/1/25 日経産業新聞

■「顧客に必要」見極め

 「ザ・ノース・フェース」はアウトドア用品の人気ブランドの1つだ。日本の販売元のゴールドウインでは売上高の約半分を占める。全国に約70ある直営店の中で原宿店(東京・渋谷)は圧倒的な売り上げを誇る。エースとして信頼を置かれているのが藤田大輔さん(33)だ。入社前の過酷な旅で抱いた商品への絶大な信頼が接客に表れている。

 「バルトロライトジャケットはありますか?」。昨年12月、ある若い男性客が来店した。「バルトロライトジャケット」は特殊セラミックスの高い保温効果を持つ防寒ジャケットで、ファッション誌にも度々登場する人気商品だ。約6万円の高価格ながら10~12月の販売数の10%を占める。

 だが藤田さんは売らなかった。男性客がアイスランドの氷河に行って着ると聞き、氷の壁を登る「アイスクライミング」に適した商品「ビレーヤーパーカー」を薦めた。

 「丈が長く、縫製もないので防風性がより高いです」。男性客は藤田さんの説明を聞き、ビレーヤーパーカーを手に帰っていった。「ごまかして売ってもダメ。信頼され続けなればお客さんは離れていく」

◇     ◇

 「売るための接客はしない。顧客に本当に必要な商品だけを売る」。藤田さんのポリシーだ。購入する商品をインターネットで決めてから来る顧客も多いが、用途にそぐわないと分かると遠慮なく指摘する。

 1年ほど前にはこんなこともあった。中年男性がノースフェースのサイトを印刷した紙の束を手に来店した。「見に来ただけだよ」と言いながらパーカーやスポーツタイツなどの疑問を次々にぶつけてきた。

 藤田さんはキッパリと答えた。「この商品は必要ありません」「今持っているアイテムで代用できます」。安易に売ろうとせずに商品の知識をもとに指摘すると、「君は面白いな。気が変わったから少し待ってて」と男性客。現金を下ろして再度来店し、140点ほどをまとめて購入した。1日の売上高の半分以上で、1度の購入額では全店で過去最高だ。

 ネットで簡単に商品を買える時代でも「この人のオススメだから」という安心感は代用できない――。「信頼を大事にしたい」と言う藤田さんには商品を信頼するようになったいきさつがある。

◇     ◇

 板前を辞め、2009年3月から10年12月にかけて世界一周の旅に出た。マイナス30度に達する南米や北欧の山も訪れた。吐く息も凍る環境で身を守ってくれたのがノースフェースのアンダーウエアやフリースだ。「信頼する商品を広める仕事がしたい」。帰国後の11年、ゴールドウインに入社した。

 原宿店には1日に最大200人が訪れる。価格と機能がともに高い商品が多く、来店客が店員に求めるハードルも高い。藤田さんは店内の全商品の知識を頭に詰め込んでいる。すべての疑問に答えられるように、アウトドアや競技についての勉強も欠かさない。

 「原宿店のスタッフなのに何で分からないの?」。ある日、来店客の声が店内に響いた。驚いてそちらを見ると、男性客が肩をいからせて店を出て行く。藤田さんは慌てて後を追った。

 話を聞くと、アンダーウエアに合わせる上着について若い店員がうまく答えられなかったという。「スタッフの教育がなっていない」「旗艦店の店員なのにスキルが足りない」。店の前の明治通りの路上で、男性の話に1時間半ほど頭を下げ続けた。

 藤田さんは若い店員を連れて月に1~2回、山へ行く。「そこで商品の機能を実感すると来店客にスムーズに説明できるようになる」。誰よりも商品に安心感を持っているからこそ、他人に伝えたいとの強い思いにつながる。

(宇都宮想)

 ふじた・だいすけ 2011年ゴールドウイン入社。「ザ・ノース・フェース」の小田急町田店(東京都町田市)や池袋西武店(東京・豊島)での勤務を経て原宿店に

[日経産業新聞2017年1月25日付]

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