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メディカルフィットネス 病院が運営、運動に成果 高齢者らも安心 血圧など改善

2017/1/22付 日本経済新聞 朝刊

医師(左)の指導を受けながら運動(新潟市のメディカルフィットネスCUORE)
 医学的な知見を患者それぞれの運動プログラム作成に利用する「メディカルフィットネス」が広がり、生活習慣病の予防などに成果を上げつつある。個人の健康度や体力に合った運動療法を行う施設は全国200カ所を超す。高齢者らが集う地域の拠点にと、仲間づくりに力を入れ継続率を高める取り組みも目立つ。

 新潟市の主婦、内藤光子さん(77)は市内の猫山宮尾病院に併設された「メディカルフィットネスCUORE」に6年前から通い始めた。高血糖で同病院の太田玉紀内科部長に運動を勧められたのがきっかけだ。

 太田部長が出した「運動処方」はトレッドミルなどの有酸素運動と筋力トレーニング、スタジオエクササイズを週3回で計60~90分行うという内容。血糖値は改善し、血糖降下剤を3分の1に減らせた。「体を動かすのが楽しく、健康を実感できる」(内藤さん)

 CUOREの会員は143人(平均年齢56.7歳)。糖尿病、高血圧症などの生活習慣病を抱える人が多い。血液検査や体組成分析、腹部内臓脂肪のコンピューター断層撮影装置(CT)検査などを定期的に実施。体力測定も踏まえて「運動効果を医学的に判定し、プログラムを組み替える」(太田部長)。

 こうした取り組みはメディカルフィットネスと呼ばれる。医師の指示のもと、医療機関で健康状態を詳しく調べた上で体力を測定。会員はそれに基づき作成された運動プログラムに取り組む流れが一般的で、管理栄養士による栄養指導もある。会員は入会費や1万円前後の月の利用料のほか、検査料などを支払う。

 山形徳洲会病院(山形市)が2008年に開設した「ラ・ヴィータ」は会員約2千人と有数規模の施設だ。1階にプールやスパ、2階にジムとスタジオ、屋内ランニング・ウオーキングコースを備え、理学療法士など有資格者も含めトレーナー約30人が指導する。

 病歴のある人が「隣が病院だから安心」と入会するケースが多い。同病院の大沼寧(やすし)整形外科部長は「以前はリハビリを終えた後、継続的な運動が必要な患者が利用しやすい施設がなかった」と話す。

 整形外科医で4施設を福岡県で展開する「メディカルスポーツライフ研究所」(北九州市)の新庄信英社長は127人の会員を半年~5年間、追跡調査。その結果、血圧や中性脂肪、血糖値の平均が大きく低下していることが分かった。「高血圧症では約4割、脂質異常症では約6割が薬の量を減らしたか、服薬を中止していた」(新庄社長)

 こうした効果が上がるよう、「楽しさ」を加味するのが最近の傾向だ。群馬県高崎市の黒沢病院が運営する「メディカルフィットネス&スパ ヴァレオプロ」はボウリングやハイキングなどのイベントを開催する。小林大介ゼネラルマネージャーは「何より継続が大切。堅苦しい印象を持たれないよう演出している」。入会から半年間の退会率は1%台という。石川県小松市の「ダイナミック」も書道や絵画など約20のカルチャースクールを開設する。

 「病院外でも見守られている、という安心感が運動の継続につながる」。関西医科大付属病院健康科学センター(大阪府枚方市)の木村穣教授は指摘する。

 昨秋、患者が装着したリストバンド型端末で24時間、運動量や睡眠時間などを把握するシステムを試験導入した。約100人が利用。システムが自宅でできるエクササイズなどを分析し「もう少し頑張りましょう」などのコメントとともにメールを送る。人工知能(AI)で最適な助言や運動法を提案する仕組みの実現も目指している。

◇     ◇

■全国で200ヵ所超

 メディカルフィットネス施設は1980年代から全国に広がった。88年度からの「第2次国民健康づくり対策」で国は遅れていた運動習慣の普及を推進。健康増進法の2003年施行もあり、健康意識の高まりを受けて取り組む施設が増えた。

 医療機関が開設・運営する施設は約220カ所。医療法42条に基づき、医療施設(病院・医院)と疾病予防施設(フィットネス施設)の「合築」が認められた施設だ。医師や健康運動指導士らの配置、有酸素運動用機器などの整備が要件になる。

 この「42条施設」とも一部重なる形で、一般のスポーツクラブなどを含む約340カ所が「運動型健康増進施設」に認定されている。「有酸素運動を安全かつ適切に行える」とされた施設だ。うち約210施設は生活習慣病に治療効果がある運動療法を行う「指定運動療法施設」。利用料は治療費とみなされ、所得税の医療費控除の対象になる。

(編集委員 木村彰、藤井将太)

[日本経済新聞朝刊2017年1月22日付]

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