普通のキャベツの20倍 重さ20kg「札幌大球」復活作戦高齢化で栽培減少 「農業の多様性守る」

最大20キロにもなる札幌大球の収穫は重労働だ(札幌市)
最大20キロにもなる札幌大球の収穫は重労働だ(札幌市)

かつて北海道では重さが20キログラムにもなる巨大キャベツ「札幌大球(たいきゅう)」が各地で栽培され、漬物の材料として使われていた。しかし、少子化や漬物を作る家庭の減少などにより需要が激減。道民の日常生活から姿を消した。札幌市では数年前からこの幻のキャベツを伝統野菜の一つとして復活させ、農業の付加価値向上につなげようという動きがある。

「今冬のニシン漬けの出来は上々」と高級漬物メーカー北彩庵(札幌市)の酒井秀彰社長は満足そうに話す。ニシンとキャベツを一緒に発酵させた漬物は冬の北海道を代表する食品。同社のニシン漬けは普通のキャベツではなく札幌大球を使う。「葉が肉厚で漬物にしてもへたらず、キャベツ特有の歯応えが残る」

最盛期は1000ヘクタールに

実は北彩庵が札幌大球を扱うのは今冬がまだ3回目。名前に「札幌」を冠してはいるものの、札幌大球は地元の人々にさえほとんど忘れ去られた存在だった。

札幌大球は重さ8~20キログラム前後と、大きいものは普通のキャベツの20倍近くある。開拓時代に海外から道内に持ち込まれた品種を掛け合わせ、改良の結果生まれた。札幌市の前農政部長で現在はJFEエンジニアリング北海道支店顧問の三部英二氏は誕生の理由を「農家が大きさを競い合ったほか、外側が凍結しても中の可食部が無事なので重宝された」と説明する。

札幌大球の栽培のピークは1935年ごろで作付面積は1000ヘクタールに達した。ただ、収穫は重労働。高齢化で栽培を断念する農家が増え、主要な産地である石狩市の厚田地区でも2007年に15戸ほどあった栽培農家が12年までに6戸(現在は3戸)に減少した。

札幌市の農業政策のトップだった三部氏は絶滅を危惧した。まず12年にイタリアのスローフード協会が認定する希少な伝統食材「味の箱舟」へ登録申請(15年に認定)。札幌市農業協同組合(JAさっぽろ)を通じて市内の複数の農家が栽培することも決まった。

「札幌大球を本当に残すには販路が必要」(三部氏)と、食の高付加価値化などを手がけるブレナイ社(札幌市)のエグゼクティブマーケティングプランナー、日原康貴氏に食品メーカーとの橋渡しを依頼。名乗り出たのが北彩庵だった。

オーナー制度考案

日原氏が考案したビジネスモデルはオーナー制度。年間4000円を支払って札幌大球のオーナーになり、ニシン漬けを後日受け取る。「市場取引と違い、需給の変化で値崩れしないで済む」(JAさっぽろ)

札幌大球は栽培や収穫に手間がかかり、歩留まりも悪い。だが、「札幌の農業の魅力は規模ではなく多様性。先人たちの遺産を引き継ぐことも重要」(三部氏)。17年はオーナーが栽培に参加する仕組みも取り入れる方針だ。

■ほかにもある伝統野菜 枝豆「サッポロミドリ」、「札幌白ゴボウ」…
伝統野菜といえば京野菜が全国的に知名度が高いが、札幌でも複数の伝統野菜が栽培されてきた。札幌大球以外ではタマネギの「札幌黄」や枝豆の「サッポロミドリ」、「札幌白ゴボウ」、「札幌大長ナンバン」などが地元固有の野菜として知られる。
伝統野菜は通常の野菜で一般的な一代交配種(F1)と異なり、形や病気への耐性にバラツキがある。そのため、効率性を求める近代農業では敬遠されがちだが、札幌市はそのブランド力に注目。新規就農者など多様な担い手を引き付けるためにも、伝統野菜の普及に力を入れている。
(小山隆史)
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