検査で異常ナシ…痛みは続く ペインクリニック受診を新薬登場、治療に選択肢

2016/12/22付

医師にどこも悪くないと言われる、検査でも異常が見つからない――にもかかわらず3カ月以上痛みが続くようなら、それは「慢性痛」だ。どうせ治らないと諦める前に、痛み治療が専門のペインクリニックを受診してはどうだろう。新薬も登場しており、自分に合った治療法が見つかるかもしれない。

「ぎゅーっと締めつけられるような痛みがずっと続いていた」

医師との密なコミュニケーションも重要(東京都板橋区の日大付属板橋病院)

東京都板橋区の日本大学付属板橋病院。2年前から同院のペインクリニック科に通う76歳の女性は、11年前に乳がんの手術を受けて以来、背中の痛みに苦しんでいた。乳がんは完治したが、背中の痛みは治る気配がなく、検査をしても原因が分からなかった。

「医師に『もっとひどい人もいる』と言われ、あきらめていた」と女性。しかし、4年前に痛みが悪化した。10分と立っていられず食事もできない。体重は8キログラム落ち、ほとんど寝て過ごすようになったという。

2年ほどして医師の紹介でペインクリニック科を訪れた。「先生に『1分でも痛みを消せるよう頑張ろうね』と言われ、痛みを認めてもらえたことがうれしかった」。現在は薬で治療している。「まだ痛む時もあるがだいぶ楽になった。何より気持ちが前向きになった」。今では週3回、ジムでヨガを楽しんでいる。

患者2500万人超か

検査などで異常は見つからないが3カ月以上続く痛みを慢性痛という。国内の患者数は推計で2500万人以上。その治療を専門に手がけるのがペインクリニックだ。治療を担当するのは麻酔科医ら専門医で、病院のペインクリニック科のほか、専門の診療所も開設されている。

ペインクリニックでは主に神経ブロック療法や投薬治療が行われる。以前は鎮痛剤の種類が少なく効果的な治療がなかなかできなかったが、最近「トラマドール」「リリカ」などの新薬が続々登場。慢性痛の治療も変わりつつある。日大付属板橋病院の加藤実部長は「薬の選択肢が増えたことで一人ひとりの症状に合った薬を処方できるようになった」と語る。

例えば炎症などが原因のズキズキとした痛みにはまず通常の鎮痛剤を処方。それが効かない場合は「弱オピオイド」と呼ばれる強めの薬を使う。「もう治らないのでは」といった不安で痛みが増すこともあるため、「カウンセリングなどで患者の不安を和らげることも大事だ」(加藤氏)。

具体的に伝える

ペインクリニックを受診する前に、「まず主治医に痛みについてしっかり話すことが大切」と加藤氏は助言する。ほとんどの場合、痛みは疾患などのサインとなっている。身近な主治医に相談し検査などで異常がないかを確認。痛みの原因となる疾患を治療することで痛みが治ることもある。

ペインクリニックにかかる際は、かかりつけの医療機関の紹介状やそれまでの検査結果があった方が治療がスムーズに進む。また、痛みが始まった時期や治療で用いた薬など「痛みの履歴」も準備しておこう。

一般社団法人マイインフォームド・コンセント理事長の佐伯晴子氏は「ただ『痛い』だけでなく、いつ、どこで何をするとどう痛いのか具体的に伝えるとよい」と話す。痛みの種類を見分けられ、治療もしやすい。「普段から痛みを感じたら紙に書き留めるなど医師に伝える準備をしておきたい」(佐伯氏)

慢性痛の治療に際しては「目標設定も大切」と加藤氏。「治療をしても痛みがゼロになることは少ない。多少痛んでも家事や仕事ができる、趣味の運動ができるなどの目標を設定すると治療方針を決めやすい」という。専門医のサポートを受ければ、痛みと上手に付き合っていくことも可能だ。

◇     ◇

一般医師にも知見広がる

日本は「痛み」治療で海外に後れを取っていたが、最近は環境が整いつつある。日本ペインクリニック学会が認定する国内のペインクリニック(麻酔科含む)は、2012年に318施設だったのが16年には349施設となり、専門の診療所も増えてきた。専門医の数は1500人を超え、さらに一般の診療科の医師の間でも痛みの治療に関する知見が広がりつつあるという。

治療の選択肢も徐々に増えている。慢性痛の治療薬や医療機器の開発も相次ぐ。塩野義製薬は11月、がんの痛み治療に使われる「オキシコドン」をがん以外でも使えるよう厚生労働省に申請した。医療機器メーカーの米セント・ジュード・メディカルはiPodタッチをリモコンとして使う埋め込み型の痛み緩和機器を5月に発売している。

(二村俊太郎)

[日本経済新聞夕刊2016年12月22日付]

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