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ブック、おススメの1冊

超予測力 P・E・テトロック、D・ガードナー著 正解多い人の方法や特徴とは

2016/12/18付 日本経済新聞 朝刊

鉄板だと思われた予想がみごとはずれることがしばしば起きる。今年で言えば、イギリスのEU離脱やトランプ氏の大統領選勝利がそれだ。株価の暴落が大多数の人の読み違いを裏付けた。本書は、このようなままならない地政学的予測・経済的予測に長(た)けた「超予測者」が実際に存在することを明らかにし、彼らの特徴を分析した本である。

(土方奈美訳、早川書房・2200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

著者テトロックらは数千人のボランティアを集め、「優れた判断力プロジェクト(GJP)」なるものを組織し、彼らに、「朝鮮半島で戦争が勃発するか」「金相場は暴落するか」といった膨大な予測問題を課した。日本に関する予測では「安倍晋三首相が靖国神社を訪問するか」などがある。これらの予測問題について、一般人よりも、また、専門家と呼ばれる人々に対してさえも、成績が有意に優れた人々が見つかったのである。

こう聞くと、慎重な人は、単なるまぐれじゃないの? とかんぐることだろう。○×クイズに莫大な人が参加すれば、統計的に全問正解者が存在する。でも大丈夫、著者はちゃんとこのツッコミへの回答を用意している。統計学の観点でも、超予測者はまぐれではないのだ。

彼らは学歴も職業もさまざまだ。その特徴は人物ではなく方法論にある、と著者は説く。方法論的な特徴は多数ある。彼らは複眼的であり、数字に強い。思想・信条に固執せず、反対意見を重んじる。確率論的な視点を持ち、情報によって予測を更新する。

本書を読むと、まるで我々誰もが超予測者になれるかのような錯覚に陥るが、そう甘くはないだろう。何より彼らは、膨大な予測問題に、タフな情報収集と詳細な論理的考察で回答するエネルギーを持ち合わせている。これだけでもう生まれ持った特殊能力と呼べるだろう。でも、超予測者の仲間入りは無理としても、並予測者くらいにはなれるかもしれない。超予測者の方法論は、どれもが常識的であり、突飛(とっぴ)ではない。高度な数学も必要ない。ただそれは、我々が面倒がって無意識に避けている考え方なのだ。これらを表層意識に刻むだけで、予測能力はだいぶ改善されることだろう。

さらに本書を同僚みんなで読み込んで議論すれば、会社の雰囲気が明日から変わるかもしれない。とりわけ、第9章のチームワークの議論は、管理職の方々には溜飲(りゅういん)下がるものだろう。そんな時間がない、と嘆く超多忙者は、付録「超予測者をめざすための10の心得」を斜め読むだけでも十分に役立つ本である。

(帝京大学教授 小島 寛之)

[日本経済新聞朝刊2016年12月18日付]

超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条

著者 : フィリップ・E・ テトロック, ダン・ ガードナー
出版 : 早川書房
価格 : 2,376円 (税込み)

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