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さつまあげ発祥の地 鹿児島・いちき串木野

豆腐でふわっ お正月にも、もってこい

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NIKKEI STYLE

さつまあげは鹿児島県の代表的な郷土料理の一つで特産品でもある。県内には個人経営も含めて100軒以上の事業所が点在しているともいわれ、19世紀から続く老舗もある。現在も各地の歴史や文化を脈々と引き継ぎながら企業ごとに商品の個性を競い、県民らの舌と胃を満たしている。

鹿児島では魚のすり身に「灰持酒(あくもちざけ)」と呼ぶ地酒などを加え、菜種油で揚げて作ることが多い。地元では「つけあげ」と呼ぶが、百貨店の物産展などで売る場合に県外の人には分からない。そこで「薩摩名物の揚げもの=さつまあげ」とし、その名称が広まったとされる。

つけあげの由来には諸説ある。原型とされる琉球の揚げ物「チキアーギー」がなまったという説や、産業振興に力を注いだ幕末の11代薩摩藩主、島津斉彬がはんぺんやかまぼこの技術を導入し、改良させたのが始まりだとする説などだ。

◇     ◇

いちき串木野市は薩摩半島の北西部にあり「さつまあげ発祥の地」をうたう。同市観光特産品協会の久木山睦男会長(59)が解説する。「東シナ海を望む当地は漁業が盛んで、昔から家庭でかまぼこを作って食べる習慣があった。それが薩摩藩の時代に中国や琉球との貿易を通じて流入した揚げ物文化と結びついた」

いちき串木野産に共通するのが原料に豆腐も加え、ふわふわの口当たりに仕上げる点だ。記者も試してみたが、食べ慣れたさつまあげとは明確に違う。県北の阿久根産も豆腐を用いるが、より軟らかいという。

久木山氏が社長の日高水産加工(1948年創業)は材料を石臼でじっくり練って粘りや食感をよくする。甘酒も加える。「甘さは薩摩藩のおもてなし文化。辛い焼酎にも合う」と久木山氏。同社は「伝統の継承、味の革新」を掲げ、味付け担当は10人程度と従業員の1割以上。サメも含め地元の魚をなるべく捨てずに使い、品ぞろえも60種類以上だ。工場は通路から生産の様子を見学できる。

たからや蒲鉾(50年創業)は1日に1500~1600丁の豆腐を仕入れて使う。福留由人社長(68)は「1度に200丁を入れて材料を練り上げる様子はインパクトがある」と話す。看板商品である「上棒天」は商標登録し、一口サイズに作るこだわりようだ。

勘場蒲鉾店(71年創業)は対岸の甑島列島(薩摩川内市)沖原産の海洋深層水を原料を練る際に用いる。「ミネラルを豊富に含み、魚の加工品に合わないはずがない」と勘場裕司社長(48)が教えてくれた。

◇     ◇

鹿児島市の徳永屋本店は創業が1899年(明治32年)と伝統がある。市場のセリに参加する権利を持ち、鮮魚を自社ですり身に加工し、さつまあげを作る。「鹿児島で水揚げされた生魚でおいしい製品を作ることにトコトンこだわっている」と徳永進社長(67)。白身魚のエソやイトヨリ、ハモなどを厳選して使う。

1912年創業で同じく歴史が長い有村屋(鹿児島市)は海外での需要開拓にも熱心だ。インドネシア工場は2012年に稼働を始め、イスラム教の戒律に沿っていることを示すハラル認証を14年に取得した。鹿児島県蒲鉾協同組合理事長も務めている有村興一社長(76)は「現地では練り物を食べる文化があり、可能性は大きい」と読む。

「チャレンジ精神がウチの持ち味。新しい製品をどんどん生み出す」。南海食品(同、1963年創業)の渕本逸雄会長(71)も意欲満々だ。「魚握(ぎょにぎり)うめきび」は県内最大の特産品コンクールで2016年度の奨励賞を得た。すり身に白米ときざみ梅を練り込み、鹿児島産キビナゴを載せてある。

脚本家・作家の向田邦子(1929~81)は父の転勤で小学生時代に2年余りを過ごした鹿児島を「故郷もどき」と呼び、随筆『薩摩揚』にこう書いた。「かの有名な『失われた時を求めて』の主人公は、マドレーヌを紅茶に浸した途端、過ぎ去った過去が生き生きとよみがえった。私のマドレーヌは薩摩揚である。」

地域ごとに特徴を出して鹿児島と縁がある人のソウルフードを磨き上げ、産業を活気づけようとする経営者らの奮闘は今日も続く。

<マメ知識>正月も欠かせぬ郷土料理
 家計調査によると、揚げかまぼこへの1世帯あたり年間支出額(2人以上の世帯)は2013~15年平均で首位の鹿児島市が7547円。2位の高松市(4020円)を大きく上回り、全国平均(2487円)の3倍だった。さつまあげの消費が多いためだ。
 鹿児島では正月には家族や親類らが集まっておせち料理やさつまあげなどを食べ、焼酎を飲みながら新しい年を祝う。年末のギフト用にさつまあげを買い求める人も多いため、11月から12月末にかけてが各社最大のかき入れ時になっている。

(鹿児島支局長 松尾哲司)

[日本経済新聞夕刊2016年12月13日付]

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