聖夜が待ち遠しい ドイツ伝統菓子、シュトレン10選
独ドレスデンの伝統菓子 クリスマスまで長く楽しむ
シュトレンはクリスマスに向けて食べるドイツの伝統菓子。洋酒に漬け込んだドライフルーツ、ナッツ類やバターを生地に練り込み、発酵させて焼き上げる。日持ちがするように作られることが多く、クリスマスまでの間に少しずつ食べるのが習わしだ。ドライフルーツやナッツが生地になじんで、時間がたつほど味に深みが出るのが楽しい。紅茶はもちろん、ワインにも合う。
ドイツ東部の街、ドレスデンが発祥といわれ、14世紀には作られていた。白い粉砂糖に覆われた独特の形状についてはいくつか説があるが、キリストのおくるみを模したというのが一般的だ。ドレスデンには伝統的な味を守るために小麦粉やバター、ドライフルーツの量を細かく規定したレシピがあり、忠実に守ったものだけが「ドレスナー・シュトレン」として販売されている。
日本でも近年、洋菓子店やパン店、ホテルなどで伝統的なものから日本人が食べやすいようにアレンジしたものまで幅広く売られている。全国には数十年前からシュトレンを作り続け、リピーターを多く持つ実力店がたくさんある。今回は専門家に店名を伏せて試食してもらい、おいしいシュトレンを選んでもらった。
高山の風が育むカリッと感
飛騨高山にある有名パン店が30年前から販売する人気商品。アーモンドを生地に練り込む直前に煎り、水分を飛ばしているため、カリッとした食感でとても香ばしい。クルミも加わり、「生地よりナッツ類の方が多く、ナッツ好きにはたまらない逸品」(猫井登さん)。レーズンやイチジクなどドライフルーツはラム酒に漬け込んでいるが、酒の香りはそれほど強くなく、クセもない。
全体的に外側はカリッとしているが、中はしっとりしていて日本人好みになっている。成瀬正シェフによると「焼き上がりの熱いうちに高山の冷たい空気にさらして表面を固めて独特の食感を生み出している」。今年は3500本を用意するが、リピーターの多い定番商品のため、クリスマス前に売り切れることも。小さい店なので取り寄せる場合は日にちに余裕を持った注文を。
(1)4000円(2)500グラム、30センチ(3)冷蔵2カ月(4)http://www.trainbleu.com/shop/stollen2016.html
果実たっぷり華やかに
福岡市にある有名フランス菓子店が作る、パウンドケーキのように滑らかな舌触りのシュトレン。たっぷりの洋酒にレーズンなど8種類のドライフルーツを漬け込み、生地にはくず粉を加えてしっとり感を出している。三嶋隆夫シェフは「シュトレンの発祥はドイツだが、日本人が好むオリジナル品を出したくて試作を重ねた」と話す。
「香りの良いフルーツがたっぷりで、ジューシーさを感じさせる華やかな一品」(瀬戸理恵子さん)。サイズが大きく、「ファミリーパーティーでメーンを張るのにぴったり」(島津睦子さん)。レギュラータイプのほか、ワイン貯蔵庫で10カ月間熟成させた限定500本のヴィンテージタイプも人気だ。贈答用の木箱もインパクトがある。
(1)レギュラータイプ6912円(2)1.5キロ、32センチ(3)常温50日(4)(電話)092・531・3011
和素材で緑茶と好相性
大ぶりの渋皮栗やたくさんの豆が入った定番の和風シュトレン。表面を和三盆ときな粉でくるみ、丹波黒豆、金時豆、ひよこ豆、青エンドウなど様々な種類の豆がぎっしり入っている。ユズピールがほのかな香りをもたらし、「和素材を多用しながらも違和感なくシュトレンとして完成している」(下園昌江さん)。ドライフルーツが苦手な人に向いている。「日本茶とも相性良い味わい」(平岩理緒さん)。同ホテルでは今年から加賀ほうじ茶の風味が豊かなシュトレンも販売しており、シュトレン上級者には喜ばれそうだ。
(1)2484円(2)330グラム、16センチ(3)冷蔵1カ月(4)http://shop.palacehoteltokyo.com/
フルーツ芳醇、本場レシピ
千葉県松戸市にある有名パン店が、シュトレン発祥の地、独ドレスデンのレシピ配合で作った。洋酒にしっかり漬け込んだドライフルーツから芳醇(ほうじゅん)な香りが広がる。「砂糖の甘さではなくフルーツの甘さが際立ち、後味は軽い」(林幸子さん)。表面にはバニラシュガーをかけ、中はしっとりした食感。「赤のホットワインと合わせて楽しめる大人のお菓子」(猫井さん)。
(1)3132円(2)450グラム、20センチ(3)常温1カ月(4)http://zopf.jp/backstube-zopf/b-menu-index/2016stollen/
絶妙な口溶けの本格派
福岡県久留米市の洋菓子店が、ドイツ人の菓子マイスターから習ったレシピで作る本格派シュトレン。ドライフルーツやアーモンドがたっぷり。「焼きのバランス、味、バターの染み込みなど全てにおいて完成度が高い」(野沢孝彦さん)。「フルーツと生地のバランスが良く、口溶けが良い」(根岸靖乃さん)。ドイツのシュトレンに近い仕上がりで、本場の味を知る専門家から高く評価された。
(1)4320円(2)850グラム、24センチ(3)常温3カ月(4)http://g-spoon.com
仏アルザス風 リッチな味わい
仏アルザスに伝わるシュトレンを再現した。焼き上がった直後に熱々の溶かしたバターにくぐらせることで生地の気泡が開き、ちょうど良い量のバターが中に入る。ドイツのものよりしっとりとやわらかい食感だ。「バターのミルキーなコクに、2本の香りよいマジパンが加わりリッチな味わい」(chicoさん)。系列の店舗でも同じ商品が買える。保存がきく方法で作っていないため、日持ちは短め。
(1)2160円(2)250グラム、16センチ(3)常温15日(4)(電話)044・856・7800
スパイス香る大人向け
「雪山のようななだらかな形が美しく、スパイスの香りが鼻に抜ける」(下園さん)大人向けのシュトレン。「熟成した生地と酸味のきいたオレンジなどのドライフルーツ、クルミなどナッツ類のバランスが絶妙」(原亜樹子さん)。リピーターの多い定番商品で、ミニサイズも用意している。ケシの実のペーストとクルミを練り込んだ「モーン」、渋皮栗とイチジクを使った「マロン」もある。
(1)2800円(2)630グラム、19センチ(3)常温3週間(4)(電話)03・5323・3462
さいたま市にある人気フランス菓子店が作った。「しっとりした生地が良い」(小林茂樹さん)。「ナッツがゴロゴロ、フルーツがたっぷりでかむのが楽しい」(瀬戸さん)。大きいサイズあり。
(1)1600円(2)300グラム、13センチ(3)常温40日(4)(電話)048・877・7021
広島県廿日市市にあるドイツ菓子店のオリジナル。2014年のドイツ農業協会(DLG)のコンテストで金賞を得た。「ブリオッシュのような生地で発酵具合が絶妙」(林さん)。
(1)2500円(2)400グラム、20センチ(3)常温3カ月(4)http://felderchef.com/menu/stollen/
ドイツ人の初代シェフ直伝のレシピで提供する人気商品。ドライフルーツ、スパイス、マジパンを練り込んだ正統派。「火通りが良く焼けている」(根岸さん)。取り寄せはLサイズのみ。
(1)3500円(2)400グラム、19センチ(3)常温1カ月(4)(電話)03・3344・0111
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中心から1センチ幅でカット
シュトレンは端から切り始めるのではなく、まずは真ん中に包丁を入れて、端に向かって1センチ幅で薄く切っていくのがおすすめ。保存するときは切り口をぴったりくっつけ、ラップでしっかり巻く。保存方法は商品によって違うので確認しよう。
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ランキングの見方 数字は評価を点数化。店名、商品名。(1)税込み価格(配送料別)(2)およその重さと長さ(3)日持ち(開封前)(4)取り寄せ方法。スタイリング・来住昌美
調査の方法 専門家に取り寄せできるおすすめのシュトレンを聞き、21品を選定。名前を伏せて試食し、順位を付けてもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
小林茂樹(ドイツ連邦共和国大使館東京公邸料理長)▽島津睦子(パン・菓子研究家)▽下園昌江(お菓子研究家)▽瀬戸理恵子(フードエディター)▽chico(スイーツライター)▽根岸靖乃(日本パン技術研究所講師)▽猫井登(お菓子の歴史研究家)▽野沢孝彦(エーデッガー・タックス by Neuesオーナーシェフ)▽林幸子(料理研究家)▽原亜樹子(菓子文化研究家)▽平岩理緒(「幸せのケーキ共和国」主宰)
[日経プラスワン2016年12月3日付]
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