17歳のうた 坂井希久子著従姉妹との蜜月とすれ違い

(文芸春秋・1300円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

地方都市で生きる5人の17歳を描く作品集だが、マグロ漁師の家に生まれた留(とめ)子の日々を描く短編「Hero」は、従姉妹(いとこ)の奈美と4年ぶりに会うシーンから始まっている。留子の父と奈美の父は仲が悪く、同じ年というのに遊んだことがなく、ばあちゃんの葬式の日に函館からやってきた奈美と初めて会う。

乱暴な兄たちにいつも泣かされていた留子は嬉(うれ)しくて葬式の間ずっと奈美の手を握っていた。それからは密(ひそ)かに文通していたが、それが段々間遠になり、高校に入って剣道の試合の日に再会しても、昔のような蜜月はもうなくなっている。そのさりげないすれ違いを背景に、漁師になりたい留子の夢と、仲のいい両親との日々を鮮やかに描いていく。

★★★★

(文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2016年11月24日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

17歳のうた

著者 : 坂井 希久子
出版 : 文藝春秋
価格 : 1,404円 (税込み)

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