収穫量シェア78% 落花生、なぜ千葉に根付いた火山灰地でも生育 品種改良で収量安定

2016/11/22

日本の歩き方

JR八街駅には落花生をイメージしたモニュメントも
JR八街駅には落花生をイメージしたモニュメントも

千葉県は2014年の農業産出額が4151億円と全国4位につける。シェアトップの作物も多いが、なかでも群を抜くのが落花生だ。15年の収穫量は9590トンで、実に全国の78%を占める。ゆでて食べたり、ギフトの定番にしたり。成田山の節分では大豆に加え、落花生もまく。なぜここまで千葉に根付いたのか。

落花生は南米が原産で、明治時代になって日本で本格的な栽培が始まった。1874年に政府が米国から種子を導入し、栽培を奨励。その2年後には山武郡南郷町(現山武市)の農家、牧野萬右衛門がいち早く試作に取り組み、これが県内での栽培の始まりとなった。その後も匝瑳郡鎌数村(現旭市)の戸長だった金谷総蔵が栽培や販売に尽力したことで知られている。

背景には県北部の北総台地は火山灰が多く、作物の生産に適さなかったことがある。落花生はやせた土地や干ばつに強く、栽培の手間もかからない。ただ、農家には当初、抵抗があったという。落花生は名前の通り、花が枯れて落ちて実をつけるため「縁起が悪いとされた」。全国で唯一、落花生の育種を手がける県農林総合研究センター落花生研究室の雨宮昭彦室長は苦笑する。

落花生研究室は育種素材として約1600種の種子を保有する

栽培の歴史と土地の条件に加え、昭和の品種改良が後押しした。特に1953年に県農業試験場(現県農林総合研究センター)が育成した「千葉半立」は栽培が容易で、収量も安定したことから県全域に広がった。60年以上を経た現在でも、県内の作付面積の66%を占め、主力品種であり続ける。輸入品の増加や栽培作物の転換などから落花生の生産は全国的に減少したが、産地となった千葉県は相対的にシェアが上昇していった。

現在では国内で流通する落花生の9割は中国産などの輸入品が占める。安価なイメージが定着しているが、国産品の価格は輸入品の5倍以上と高価だ。「千葉では自信をもって落花生をギフトにする人が多い」と名産品を販売するやますの諏訪寿一社長は話す。県が14年に実施した世論調査でも、県産品を土産物や贈り物にするなら落花生・同加工品を選ぶという回答が55%(複数回答)にのぼり、トップだった。落花生の産出額は14年で79億円とそれほど大きいわけではないが、ソウルフードとして県民の生活に深く根ざしている。

合言葉は「ウイ・ラブ・ラッカセイ」

千葉市は収穫体験などのキャンペーンを展開し落花生への関心を高める

11月11日は「ピーナツの日」。11月になると、収穫された落花生が市場に出回るようになる。落花生は1つの殻に2つの実が入っており、11月11日という数字の並びがイメージに合うことから業界団体が定めた。

県内の産地は首位が八街市、2位が千葉市とされる。千葉市は落花生をもっと知ってもらおうと、昨秋からキャンペーンを始めた。「ウイ・ラブ・ラッカセイ」を合言葉に収穫体験などのイベントを催している。

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