綿矢りささん 故郷・京都題材に長編小説
「お国言葉」で3姉妹描く
京都の高校に在学中の2001年、パソコンのチャットを題材にした「インストール」で作家デビュー。04年には周囲から浮いた高校生の男女の交流を描いた「蹴りたい背中」で、芥川賞に最年少の19歳で選ばれた。最新長編「手のひらの京(みやこ)」(新潮社)では故郷の京都を初めて舞台とした。
「以前はあまりに近すぎて何を書いていいのか分からなかったが、2年ほど前から再び東京に移り住み、帰りづらくなったことが影響しているのかもしれません。京都の季節の移り変わりの中で、人間の感情を描きたいと思いました」
京都で実家暮らしをする三姉妹の物語。図書館員の長女「綾香」は30歳を過ぎて結婚への焦りを募らせるようになり、新人OLの次女「羽依(うい)」は恋愛体質が原因で先輩から「いけず」攻撃に遭い、理系大学院生の三女「凜(りん)」は京都を離れることを考えている。
それぞれ悩みを抱えながらも、家族などの支えもあって真っすぐに生きようとする。京都という土地の力も、小説に漂う幸福感を裏打ちしているのだろう。
作中で京都弁を使うのも楽しかったという。「『そやな』と『そうやな』ではニュアンスが異なる。普段話している通りの会話なので、とても楽。京都弁って自由だなと感じました」
芥川賞を受賞してしばらくは創作に悩んだ時期も。「身近なことを書いてはいけないといったヘンな縛りが自分にあって。そのうちに興味のあるものを書けばいい、と思い直しました。今は自分の中で旬なうちに書くようにしています」
昨年末、第1子となる男児を出産。「執筆時間の確保は難しくなりましたが、刺激は受けています」と笑顔を見せる。
[日本経済新聞夕刊2016年11月22日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。