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身近のインフラツーリズム ダム・橋、気軽に楽しむ「東京のパナマ運河」や万世橋、家族・女性が気軽にツアー

2016/11/5

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東京都心と湾岸、横浜を結ぶ舟運の社会実験では、歴史ある万世橋などのインフラを見学できる
東京都心と湾岸、横浜を結ぶ舟運の社会実験では、歴史ある万世橋などのインフラを見学できる

ダムや橋などを観光資源として活用する「インフラツーリズム」が首都圏でも広がりつつある。宮ケ瀬ダム(神奈川県)や首都圏外郭放水路(埼玉県)のように知られた場所以外にも見学できる場所が増え、ツアーが続々登場している。かつては愛好家向けという印象があったが、最近は近場で気軽に楽しむ家族連れや女性が目立つ。国や自治体は普及を後押し、地域の新たな魅力の発掘につなげる。

「『東京ウォーターフロント&ライフライン探検隊』に参加しませんか」。東京都が東京観光財団やJTBグループと組んで初めて企画したのが東京湾岸や奥多摩を舞台に「水」に関わるインフラを巡るツアーだ。

湾岸では東京のパナマ運河と呼ばれる扇橋閘門(こうもん)で2メートルの水位の変化を間近で観察。防波堤に使う大型のコンクリート製の箱をつくる初公開の設備「フローティングドック」も訪れる。奥多摩では都民の水がめ「小河内ダム」や水力発電用ダムのそばに魚の遡上を助けるために設けた魚道などを見学し、酒蔵も訪ねる。

実証実験と位置付け、今月6日から12月上旬まで4回、計80人の参加を募ったところ、申し込みは定員の4倍近い300人に上った。女性や外国人も目立つという。

国土交通省や東京都千代田区など官民で進める都心と羽田空港や横浜を結ぶ舟運の社会実験もインフラツーリズムの色を帯びる。船着き場がある秋葉原近くの万世橋は1930年完成の歴史ある橋。船にはガイドが同乗して川にかかる橋の由来を解説してくれる。初めて夜間運航し、川崎周辺の工場夜景を楽しむルートも検討中だ。

横浜港では横浜市の委託で横浜港振興協会が大黒ふ頭やコンテナターミナル、ガントリークレーンなどを2時間かけて回るコースを平日を中心に設定。貨物の積み下ろしなど普段は目にできない光景をみたいという要望に応えている。

高速道路の建設・補修や地下鉄のトンネル掘削などの現場見学会も人気は根強い。首都高速道路会社は「首都高講座」と呼ぶ見学会を年5回程度企画。家族連れから土木専攻の学生まで多彩な顔ぶれで毎回盛況だ。

インフラに親しみを持ってもらう仕掛けを工夫するところも出てきた。埼玉県は交流サイト(SNS)フェイスブックのページ「ちょこたび埼玉観光情報局」で絶景フォトキャンペーンを夏に開催。橋やダムのある風景の写真を対象に「旬のスポット賞」を設けた。県は独自に秩父地域、深谷市、寄居町の10の橋について「橋カード」も製作した。ダムを訪れた人に配られて注目を集めたダムカードの橋版で、昨春のスタートから1年で約3000枚を配布した。

意外な理由で知名度上昇中なのが県管理の「合角(かっかく)ダム」(秩父市・小鹿野町)。“ごうかく”とも読めるため、合格祈願でダムカードを求める人が増えた。県水辺再生課は「ブームを生かした取り組みができないか」と活性化に結び付く次の一手を探る。

実際に観光地として定着したスポットも多い。千葉県内の多目的ダムで最大級の亀山ダム(君津市)では、地元観光協会が12月まで秋のイベントを展開。19日に始まる「亀山湖紅葉狩りクルーズ」でもダム堤からの紅葉が人気だ。地元ではインフラの魅力をPR動画などで情報発信していく。

[日本経済新聞2016年11月5日付朝刊]