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新潟の住宅街に残る「地獄極楽小路」って何? 料亭と小道挟んで刑務所跡

2016/10/29付 日本経済新聞 地域経済

右側の古びたレンガが「刑務所跡」をしのばせる

新潟市美術館からほど近い住宅街の路地で変わった表札を見かけた。「地獄極楽小路」と書いてある。クルマが1台通れるほどの目立たない裏通りのどこが地獄で、どこが極楽なのだろう。気になって仕方ない。

「小道を挟んで料亭と刑務所があったからだよ」と教えてくれたのは、江戸時代から300年以上続く新潟屈指の料亭「行形亭(いきなりや)」のご主人、行形和也さん(76)だ。写真左手は行形亭の黒塀、右手の古いレンガ壁は1971年までそこにあった新潟刑務所の名残だという。

新潟芸者が集まって、夜ごと酒宴が開かれた料亭からは、三味線の音や酔客の声が響いた。「壁の向こうの料亭に行く日を夢見て刑期を過ごした人もいたはずだ」と行形さん。いつの頃からか、長さ100メートルほどの小道は地獄極楽小路と呼ばれるようになっていた。

行形さんはこんな資料も見せてくれた。一通の古い手紙だ。宛先は「新潟市監獄所隣り 行形亭」。京都に住んでいた高名な洋画家から戦後に届いた礼状だという。世に「地獄と極楽は隣り合わせ」などというが、現実にその光景があったとは驚きだ。

刑務所は火災による一時閉鎖を除き、この場所で約1世紀続いた。防災計画などの都合により移転が決まると、新潟市は刑務所があった歴史を残そうとレンガ壁の一部を残した。赤茶けたレンガと実物より小さく復元された通用門が、かすかに往時をしのばせる。

「服役囚が脱走して騒ぎになったことはあるが、普段は静か。バザーなどを通じて地域の住民とも交流があった」と行形さんは懐かしむ。盆と正月には刑務所で飼っていた豚の肉が近所に配られ「豚肉入りのカレーを食べるのが子供時代の楽しみだった」とも。

2万坪(約6万6千平方メートル)あった跡地には公園や税務署、年金事務所などができ、周辺にはマンションも目立つ。西大畑公園は今や新潟市でも有数の桜の名所だ。小路を通りかかった70歳代の女性2人は「この辺りには庭園で有名な旧斎藤家別邸や市の美術館などがあって、文化の香りがするわね」と話していた。

市内には「思案小路」や「ピンチャン小路」など、他にもユニークな路地がある。休日に散策してみてはいかがだろう。

▽所在地=新潟市中央区西大畑町
▽交通アクセス=JR新潟駅から車で約10分
▽料亭「行形亭」=昼の会席は1万3千円から、夜の会席は2万2千円から。2人以上で前日までに予約を

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