国内最多「貝塚のまち」千葉市 加曽利は最大級国宝相当の特別史跡に指定申請へ

2016/10/29

日本の歩き方

高さ約2メートルの貝塚の断面を間近に見ることができる
高さ約2メートルの貝塚の断面を間近に見ることができる

古代の人々が暮らしていた証しを今に伝える貝塚。縄文時代の遺跡は全国で2700ほどあるが、千葉市に最も多い124の貝塚が集積していることはあまり知られていない。なかでも国内最大級とされる加曽利貝塚はその規模や保存状態の良さから、千葉市は国宝に相当する特別史跡への格上げを目指している。

10月中旬の週末、加曽利貝塚を訪ねてみると、多くの市民が見学に訪れていた。市内から家族で来た武安聡さん(39)は「土地の来歴を知るのに貴重な遺跡だ」と感心した様子。息子の晴生さん(9)は「こんなにたくさんの貝をどうやって埋めたんだろう」と不思議そうに遺跡を眺めていた。

加曽利貝塚は縄文時代中後期の約5000~3000年前にかけて造られた。イボキサゴと呼ぶ2センチほどの大きさの貝やハマグリ、アサリなどが円を描くように埋められている。高さ1~2メートル、幅20~30メートル、長さ計300メートルにわたる巨大遺跡。近くに縄文人が暮らしていた竪穴住居の跡もあり、計13.4ヘクタールが国の史跡に指定されている。

貝塚といえば「縄文時代のごみ捨て場」と記憶している人が多いだろう。だが、貝塚からは縄文土器や石器のほか、人や動物の骨なども出土しており「単なるごみ捨て場ではなく、全てのものを大地に返す『お墓』としての役割を果たしていたのでは」(加曽利貝塚博物館の林利浩副館長)ともいわれている。

こうした縄文時代の文化を研究する学術的な重要性が指摘されるなか、千葉市は2017年度に加曽利貝塚の特別史跡指定を文化庁に申請する方針。熊谷俊人市長は「加曽利貝塚は最も伸びしろのある文化遺産。縄文時代を体験できる場所として国内外で認知度を高めたい」と話す。地元のルーツを街の活性化やイメージ向上にも役立てる考えだ。

敷地内にある博物館では29、30日に開館50周年を記念した「縄文まつり」を開催。縄文服の試着や火おこし体験のほか、縄文時代に食べられていたイボキサゴでだしをとったスープを縄文土器を使って作り、試食するイベントを開く。当時の文化を体験してもらうことで、貝塚そのものを身近に感じてもらおうという試みだ。

加曽利貝塚は高度経済成長期、市内の人口増加に合わせて宅地が急増するなか、破壊の危機に直面していた。だが、市民による署名活動により市長が保存する意向を固め、今に至るまで数千年前の形をほぼ変えずに遺跡が残されることになった。今も市民ら約60人がボランティアガイドを務め「貝塚のまち」としての地元のルーツを継承している。

出土した犬をモチーフ PR大使「かそりーぬ」

犬をモチーフにした「かそりーぬ」は千葉市のイベントで登場する

加曽利貝塚にはPR大使を務めるオリジナルキャラクターがいる。その名も「かそりーぬ」。一般から案を募集し、貝塚から出土した犬をモチーフに「加曽利」と「犬」を合わせて名付けたかそりーぬに決めた。

千葉市はこのほど、2017年度から10年間の加曽利貝塚の保存活用計画案をまとめた。この中で老朽化が進む博物館を近くの土地に移転する方針を明記した。体験学習施設の整備や多言語化を進め、受け入れ体制も強化する。

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