人工衛星はなぜ落ちてこないの?

NIKKEIプラス1

人工衛星はなぜ落ちてこないの?

スーちゃん 新しい人工衛星を宇宙に打ち上げる予定があるときいたよ。どうして人工衛星って地球を回っているうちに落ちてこないの?


スピードで遠心力、それが引力を打ち消すんだ

森羅万象博士より 11月1日に打ち上げる予定の気象衛星「ひまわり9号」だね。人工衛星は、とても速い速度で地球の周りを飛んでいるから落ちてこないんだ。外に飛びだそうとする遠心力と地球に向かう引力がちょうどつりあい、ずっと地球のそばにいるよ。

人工衛星をボールと考えて投げたとしよう。普通に投げたボールはすぐに地面に落ちるけど、もっと速いボールを投げると落ちる場所が遠くになるよね。

さらに速く投げると、ずっと遠くまで落ちずにいくよ。少しは落ちたとしても地球は丸いからどこまでも地面につかず、地球を1周してしまう。このときの速さ(秒速)は1秒間で7.9キロメートル進む速度で、新幹線の約100倍にもなるよ。秒速11.2キロメートルを超えると、ボールは地球から離れて遠い宇宙空間に飛んでいってしまうんだ。

地上では空気がじゃましてボールの速度がすぐに下がってしまう。この速度でボールが飛び続けるのはむずかしい。でも、上空の宇宙空間では空気がほとんどないから、人工衛星は飛び続けるよ。

人工衛星の打ち上げは、ロケットで高いところに持って行くだけでなく、ボールを投げるように勢いをつけてあげるんだ。地上を離れたロケットは向きを変えて、人工衛星の通り道となる「軌道(きどう)」のそばで人工衛星を押し出すよ。

人工衛星は飛ぶ軌道によって、いくつかの種類があるよ。気象衛星「ひまわり9号」のような衛星は、上空の同じ場所にとどまっている。いつも日本の天気を見守っていたいからね。こうした人工衛星を「静止(せいし)衛星」と呼び、その場所を「静止軌道」というんだ。

静止衛星は、ほんとうは上空の同じ場所にいるようにみえるだけで、そこに止まっているわけではないんだ。動かないのに、飛んでいるなんてなんだか不思議だね。

この人工衛星は、地球の赤道上から3万6000キロメートル離れた上空を24時間かけて地球の周りを回っている。地球が自分で回る速さと同じだね。2人でかけっこをすると、同じ速さだとずっと隣同士だね。静止衛星も地球と同じ速さで飛ぶので、上空の同じ場所にみえるよ。

静止軌道には、ひとつの場所にとどまって働く気象衛星や通信衛星がたくさん集まっている。衛星の飛ぶ高さが地球に近くなると、1日より短い時間で地球を1周してしまうからね。

ほかにも変わった飛び方をする人工衛星がある。北極から南極にかけての上空を飛ぶ人工衛星を説明しよう。南北の方向に地球をぐるぐると回るよ。

この人工衛星が南北を行き来するあいだに地球は東西方向に移動しているから、地球のあちこちをまんべんなく撮影するのに便利だね。

人工衛星は何周も地球の周りを回っているうちに、通り道が少しずつずれる。小型エンジンなどを使って、うまく修正しているんだ。

■26年観測続けた衛星も

博士からひとこと 世界で初めての衛星は、旧ソ連が1957年に打ち上げた「スプートニク」だ。直径はわずか60センチたらずで、宇宙空間で電波に関する科学実験をするのに使われた。それから10年あまりして、1970年には日本も初めての衛星「おおすみ」を打ち上げた。
当時はまだ宇宙空間で安定して動く電子機器を作るのが難しく、地球を6度回ったところで信号が届かなくなってしまった。
衛星の改良は進み、性能がぐんと上がってきている。たとえば、1989年に打ち上げられた磁気圏(けん)観測衛星の「あけぼの」は、2015年までの26年間、ずっと観測を続けた。

(取材協力=宇宙航空研究開発機構(JAXA))

[日経プラスワン2016年10月29日付]

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