がんを告知されたら 情報収集し、納得の治療法で闘う
電話・面談「気軽に相談を」
がんと診断されれば誰しも不安になる。その時に役立ちそうなのが国立がん研究センター(東京・中央)のサイト「がん情報サービス」だ。2012年にコンテンツに加わった「患者必携」には、心の持ちようや診療・治療、療養についての助言が記載されている。
「無理に頑張ったり、平静を装ったりする必要はありません。がんになったのは決してあなたのせいではありません」「つらい気持ちをため込まず、家族や友人に打ち明けてみましょう」。アドバイスは患者や家族、医療従事者が患者側の視点で取りまとめた。
サイトからは主治医の説明で理解できなかった点や受けた治療を記録できる「わたしの療養手帳」をダウンロードできる。自分の状態や治療方針を整理するのに活用したい。がん情報サービスへのアクセス件数は15年度の月平均で228万件。3年前の約2倍だ。
気持ちがある程度落ち着けば、病について知りたくなるはず。サイトでも情報は得られるが、同センターが運営する「がん情報サービスサポートセンター」を利用するのも一手だ。平日の午前10時~午後3時、電話で話を聞くことができる。相談料は無料だ。
眼腫瘍など希少がんで治療実績がある病院も教えてくれる。15年度の相談件数は約3100件。同センター・がん対策情報センターの高山智子がん情報提供部長は「研修を受けた相談員が対応しているので気軽に電話を」と呼び掛ける。
治療法を詳しく知りたいなら、日本医療機能評価機構(東京・千代田)が運営するサイト「Minds(マインズ)」がお薦めだ。学会などの診療ガイドラインを評価し、科学的根拠に基づき一般向けのガイドラインを掲載。専門医らが協力した「Minds版やさしい解説」も閲覧できる。
主治医とは別の専門医の意見を聞きたくなるかもしれない。日本対がん協会(東京・千代田)は専門医が電話や面談で無料相談に応じる。電話なら1回20分、面談なら30分。治療方針や投与されている抗がん剤などについて相談できる。
「治療しない方がよいと書いてあった」「この水や健康食品が効くとネットにあった」――。専門医窓口とは別に不安などを相談できる同協会の「がん相談ホットライン」には最近、根拠が乏しい情報を信じた人からの電話も多いという。
相談員歴10年で社会福祉士の北見知美さんは「不確かな話を信じ治療せず、手遅れになったことを悔いて電話してくる人もいる」と打ち明ける。
全国にはがん治療の中核を担うがん診療連携拠点病院と地域がん診療病院が計427カ所あり、すべてに面談や電話で治療費なども含めて相談できる「がん相談支援センター」が置かれている。
そのモデル、静岡県立静岡がんセンター(同県長泉町)の「よろず相談」は医療ソーシャルワーカー7人が対応。担当者は「対面を優先し、予約なしでも待たせず相談に応じる」と話す。
がん闘病は長い道のり。情報や支援の輪を上手に生かしたい。
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がん罹患予測 今年100万人突破
国立がん研究センターはサイト「がん情報サービス」で、過去の実績を数学的に補正し、その年のがん罹患(りかん)者数などの予測を公表している。それによると、2016年に見込まれるがん罹患者数は15年より約2万8000人多い101万200人。100万人突破は初めてという。
16年予測によると、男性の罹患者は57万6100人、女性は43万4100人。がんの部位別にみると、大腸がんが約15万人で最も多く、胃がんと肺がんが約13万人、前立腺がんと乳がんが約9万人で続いた。
一方、16年にがんで亡くなる人は37万4000人と予測。最多は肺がんの約8万人で、大腸がんや胃がんが約5万人となっている。
(吉田三輪、編集委員 木村彰)
[日本経済新聞夕刊2016年10月27日付]
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